自転車 — 2023/5/15 月曜日 at 16:28:06

ロードの女王・杉浦がトラックでも存在感、女子500mTTを制す!

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女子500mタイムトライアルを大会新記録で制した杉浦=伊豆ベロドローム(撮影/植原義晴)

第92回全日本自転車競技選手権大会トラック・レースが14日、静岡県の伊豆ベロドロームで開幕した。パラサイクリングでは、初日は女子500mタイムトライアルと男子1キロタイムトライアルを実施。

参加人数の関係でコンバインドで行われた女子500mタイムトライアルは、東京2020パラリンピックのロード2種目で金メダルを獲得したC3の杉浦佳子(TEAM EMMA Cycling/総合メディカル)が39秒600の大会新記録で優勝。C2の藤井美穂(楽天ソシオビジネス)が2位、同じくC2の中道穂香(テレビ愛媛)が3位だった。

杉浦は4月のW杯イタリア大会のロードタイムトライアルで落車。右半身の打撲と脳震盪で棄権した。帰国後は治療とトレーニングによって回復し、今大会に臨んでいた。「自信はなかった。落車をしないよう必死で走った。このタイムが出たことが信じられない」と、振り返った。

得意のロード種目のために、トラックの練習でバンク上方から駆け降りスピード感を養い、スプリント力やパワーを磨いてきた。それはとくにロードレース中の駆け引きのなかで早駆けや終盤の追い込みに生かされ、昨年はW杯ベルギー大会とドイツ大会、世界選手権を制し、4戦中3勝と結果につなげた。またトラックの世界選手権でも、500mタイムトライアルと3キロ個人パーシュートでそれぞれ銀メダルを獲得するなど、好成績をおさめている。

パリパラリンピックに向けて杉浦は、「実際は、国際大会ではトラック種目は係数がかかるとメダルは厳しい状況。ただ、500mに力を入れることはロードのためにもなるので、頑張りたい」と話し、前を向いた。

レース後、「自己ベストは出ていないけれど、自分なりに良いタイムが出せた」と話した川本

男子1キロタイムトライアルも、C2とC3のコンバインドで実施され、C2の川本翔大(大和産業)が係数をかけた最終タイム1分08秒432をマークし、頂点に立った。2位はC3の藤田征樹(藤建設)で1分13秒819。

川本と藤田は、ロード2種目を走ったW杯ベルギー大会から帰国したばかり。時差調整と走りの切り替えが難しいなか、トラック種目を得意とする川本が本領を発揮した。表彰台まであと一歩に迫った東京2020大会後、新しい自転車に乗り換え、自分に合った空力ポジションを探り、スタートからトップスピードに上げる練習に取り組んできたといい、「そうした挑戦がいい方向に行っていると思う」と川本。ロードの大会でも、世界のトップ選手の後ろについて、学びを得ているという。

昨年10月のトラックの世界選手権では得意の3キロ個人パーシュートだけでなく、1キロタイムトライアルでも銀メダルを獲得。パリパラリンピックでも頂点を狙うが、「本当に強い選手はトラックもロードもどちらも強い。自分もそういう選手になっていきたい」と話し、力強く語った。

タンデムで力強い走りを見せる木村(後ろ)・三浦ペア

男子1キロタイムトライアルの視覚障がいクラスでは、木村和平(楽天ソシオビジネス)・三浦生誠パイロットのペアが唯一出場し、1分3秒721でゴールした。木村はレース後、「(直前のW杯のロードの)疲労感があった。スタートから二人の脚がうまくあわず、シンクロできずに走り終わってしまった」と、唇をかんだ。

パラリンピック出場を目指し、ブラインドサッカーから自転車競技に転向した経験を持つ木村。しかし、東京パラの出場を逃し、それまでともに夢を追ったパイロットの倉林巧和さんは引退した。「僕が弱かったから東京パラに倉林さんを連れていけず、引退の花道も作れなかった。だからこそ、パリには絶対に出場して、この4年間が無駄ではなかったと証明するしかないと思っている」と、覚悟をのぞかせる木村。

現在大学4年の三浦パイロットとは、これまでもトレーニングで一緒に走ったことがあり、走りの相性もよく、1年ほど前にペアを結成。昨年の全日本選手権で初めて一緒に試合に出場し、メイン種目の1キロタイムトライアルでいきなり大会新記録をマークした。東京パラで狙っていた中距離ではなく短距離に主軸を置いてパリパラリンピック出場を目指すため、東京パラ以前から比べ、木村は体重を約10キロ増加。三浦パイロットも体重を増やして出力を上げ、昨年のトラック世界選手権では1キロタイムトライアルで自己ベストをマークして5位に入るなど、結果を出しつつある。

「体重増加に伴って筋量を増やすことはできた。これからは、アジア選手権や世界選手権に向けて絞りつつ、キレのある身体にしていきたい。今回のレースで課題になったペアとしての息の合わせ方もしっかり調整し、無駄のないライン取りに取り組んでいく」と、木村は言葉に力を込めた。

もっとも障がいが軽いC5の男子1キロタイムトライアルは、亀田琉斗が優勝した。

15日は女子3キロ個人パーシュート、男子3キロ・4キロ個人パーシュートが行われる。

(取材・文/荒木美晴、撮影/植原義晴)