車いすテニス — 2024/4/10 水曜日 at 18:38:24

【飯塚2024】ケガから復帰の大谷が白星発進、初シードの船水も難敵に勝利

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復帰戦を勝利で飾った女子シングルス第2シードの大谷=いいづかスポーツ・リゾートテニスコート

「天皇杯・皇后杯 第40回飯塚国際車いすテニス大会」は10日、大会2日目を迎えた。女子シングルスはシード勢が登場。第1シードでパリパラリンピック日本代表の上地結衣(三井住友銀行)、第2シードの大谷桃子(かんぽ生命)、第5シードの田中愛美(長谷工コーポレーション)、第7シードの船水梓緒里(LINEヤフー)らが勝利し、準々決勝に駒を進めた。

大谷は昨年の全米オープンで腰を痛め、その後のアジアパラとマスターズをキャンセル。手術をして今年の全豪オープンに臨んだが、ここでもヘルニアが再発して1回戦で途中棄権を余儀なくされた。2月に3度目の手術を行い、リハビリを経て、ようやく練習を再開できたのが3月の末のことだ。「テニスができることが当たり前じゃないと改めて思った」といい、「パリには間に合わないかも」と気持ち的にも追い込まれていたことを明かす。それでも、コーチをはじめチームメンバーの献身的なサポートもあり回復し、今大会が復帰戦となった。

大谷にとって初戦となるエマニュエル・モルシェ(フランス)との試合は、第1セットの3-2の場面で大谷の右手親指の爪がはがれ、メディカルタイムアウトを要求するハプニングもあったが、その後は冷静な試合運びで主導権を握り、6-4、6-4で勝利した。大谷は「リハビリは試行錯誤だったが、テニスの向き合い方や身体の使い方を勉強する機会になった。今日はひと試合を通して腰の痛みは出なかったので良かった」と振り返り、「決勝に進出して、上地選手と対戦したい」と意気込みを語った。

昨年大会に続き、スーパーシリーズで勝利を挙げた船水

船水は、今大会で初のシードを獲得。対戦したカンタシット・サコーン(タイ)は、アジアパラの優勝経験もあるベテランで試合の組み立てが上手い選手だが、船水が6-1、6-1で退けた。女子の場合、パリパラリンピックの代表に選出されるラインは、世界ランキング20位。大会に出場してポイントを重ねていくテニスは毎週目まぐるしく順位が変わっていくため、同18位の船水は「ひとつでも上にあがるため」に、今季はクレーシーズンの入りを遅らせてでも、まずはハードコートでの試合に優先的にエントリーしてポイントを獲得していくプランがあるといい、初めてのパラリンピック出場に向けてさらなるスケールアップを誓っていた。

男子シングルスは小田凱人(東海理化)が準々決勝に進出。眞田卓(TOPPAN)はスペインの選手にフルセットの末に敗れた。また、クアードの日本勢は2回戦で姿を消した。諸石光照(EY Japan)はディエゴ・ペレス(チリ)にストレート負け。ペレスは2021年まで男子でプレーしていたが、昨年からクアードに転向し、世界ランキングも12位まで上げている。現在のクアードの上位選手はペレスのように比較的障害が軽く、パワーとスピードを兼ね備えた選手が多いが、日本勢は比較的重度の障害で握力や腹筋が弱い選手が多い。ロンドン大会から3度パラリンピックに出場し、11日に57歳の誕生日を迎える諸石は近年のクアード界の変化に触れ、「現状では日本人選手がスーパーシリーズの1回戦を突破すること自体が大変なこと」としつつも、相手を揺さぶるような戦術で勝機を見出したいと話していた。

また、この日から各クラスのダブルスがスタート。男子は第2シードの小田凱人(東海理化)・三木拓也(トヨタ自動車)組、第4シードの荒井大輔(BNPパリバ)・眞田卓(TOPPAN)組が初戦に勝利し、準々決勝進出を決めた。

(取材・文・撮影/荒木美晴)