車いすテニス — 2019/10/5 土曜日 at 0:44:03

楽天オープンに車いすの部が新設! 初代王者に向け国枝が好発進

by
単複で勝利した国枝。序盤は動きが硬く「パラの初戦のつもりで臨もうと、自分にプレッシャーを与えていた」と明かす=有明テニスの森公園(撮影/植原義晴)

テニスの「楽天オープン2019」は4日、有明テニスの森公園で車いすの部が始まった。車いすの部は今年から新設され、男子シングルス8名、同ダブルス4組で頂点を争う。グランドスラム、スーパーシリーズ、ITF1シリーズに次ぐグレードのITF2シリーズに属し、賞金総額2万2,000ドルの国際テニス連盟(ITF)公認大会となっている。

男子シングルス世界ランキング2位の国枝慎吾(ユニクロ)は、1回戦で同34位のイム・ホーウォン(韓国)を6-2、6-1で下して準決勝に進出。また、ステファン・オルソン(スウェーデン)と組んだダブルスでは、水越晴也(アイシンソフト・ウェア)・小田凱人(一宮市立西成中)組に6-0、6-0で快勝し、5日の決勝に駒を進めた。

シングルスの初戦は時折、強風が吹くなかスタート。国枝は序盤、リターンが甘くなり、第4ゲームでブレークを許すが、それ以降は丁寧なサーブとショットで試合を組み立て、主導権を握った。古傷の右肘に負担がかからないよう改良中のバックハンドは、全米オープン後のセントルイスの大会でさらに改造し、手ごたえを感じている様子。試合によって波があることからまだ完成形とはいかないが、「今年中に100%になるよう頑張りたい」と言葉に力を込める。

屋外コートで行われる試合を観戦できるグラウンドチケットの価格は1,000円と手ごろな設定。この機会に、ぜひ車いすテニスを楽しんでみて

有明テニスの森公園は、東京2020オリンピック・パラリンピックの会場となる。この日の車いすテニスの試合は、新設された「楽天カードアリーナ」(今大会の名称)など屋外コートを使用。このアリーナに関してはバリアフリーの動線が確保され、コートはジャパンオープンなど国内で開催される車いすテニスの大会会場に比べて、ベースラインと背後の壁の間が広くとられるなど特徴的だ。

また今大会は、ホームの歓声を確認する絶好の機会となる。「パラはよりプレッシャーがかかる。プレッシャーををプラスに変える方法を今回のゲームで見つけていきたい」と国枝。サーフェスについては「球足は遅めだが、ボールは高く弾む」といい、シングルスでは「あまり下がりすぎないことを意識した」と話す。

これまで、男子・女子・クアードと各カテゴリーのトップランカーに日本人選手が名を連ねながら、国際大会を東京で観る機会はほぼなかった。それだけに、楽天オープンで車いすの部を導入することは、関係者そして選手にとって長年の夢であり、目標だった。国枝自身も「いつもお客さんの立場で観戦していて、いいなと思っていた。10年くらい前から車いすテニスもやってほしいと伝えていた」と語る。

車いすテニス日本代表チームの中澤吉裕監督は、「開催に至り、率直に嬉しい。(健常の)トップ選手と一緒にできるのは身が引き締まる思い」と語る。また、シングルス1回戦で中国の選手と1時間半にわたる死闘を繰り広げた荒井大輔(BNPパリバ)は、「選手としてこの大会に出場するのはとても誇らしいこと。僕ら選手は、来年以降も継続して開催されるよう、またより多くの人に車いすテニスを知ってもらい、また観たいと思ってもらえるようなプレーをしなければいけない」と話していた。

5日はシングルス準決勝2試合と、ダブルスの決勝戦が行われる。

(取材・文/荒木美晴、撮影/植原義晴)