【バンクーバーパラリンピック】スレッジホッケー大会総括  トップ3の牙城を崩した日本の躍進

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カナダから”歴史的”な一勝を挙げた日本は、決勝で敗れたものの史上初のメダルを獲得/撮影:吉村もと

バンクーバーパラリンピックは、優勝アメリカ、2位日本、3位ノルウェーという順位で幕を閉じた。日本の銀メダル獲得は、夏・冬のパラリンピックを通して団体競技として初となる快挙。決勝戦の様子は日本でも急きょ、テレビで生中継されるなど注目を集めた。また、優勝したアメリカは、全試合無失点という完全勝利で金メダルを獲得し、存在感を見せつけた。非常に見ごたえのある試合が多かった今大会を、上位チームの戦績を中心に振り返る。

アメリカ 優勝の立役者は20歳のゴーリー

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大会のベストゴーリーにも選ばれたアメリカの守護神・Steve CASH

選手の平均年齢が23歳と若いチームながら、攻守に抜群の安定感を見せたアメリカ。3セットまわしを強みに、攻撃面ではスピードを活かしたセットプレーやカウンターなど、多彩なプレーで観客を魅了した。

また、何といっても素晴らしいのは、全5試合で「無失点」という堅守ぶり。相手の攻撃をことごとくつぶす高いディフェンス力はもちろんのこと、ゴールキーパー・Steve CASHが大活躍。全5試合で浴びたシュート34本をすべて抑える100%のセーブ率を見せた。大会のベストゴールキーパーにも選出された彼は、まだ20歳と若い。チームとしても10代と20代前半の選手が中心メンバーとして活躍しており、今後のさらなる「のびしろ」はライバル国にとって脅威になりそうだ。

日本 カナダを破ってファイナル進出の快挙

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大会直前に主将に任命された遠藤隆行はリーダーシップを発揮してチームを引っ張った

今大会、日本代表にとって大きな山となったのが準決勝。日本は優勝候補の筆頭と言われたカナダの高い攻撃力を徹底的にマークし、相手が攻めあぐねて攻守に甘さが出た瞬間を見逃さずに、スピードを活かして得点を重ねた。結果は3-1。2002年のソルトレークシティ大会の予選以来の勝利で、中北ジャパンになってからは初めての勝ち星。トリノ大会以降、積極的にカナダ遠征などを実施し、実践力に磨きをかけてきた努力が実を結んだ形だ。

一方の決勝のアメリカ戦では、相手の鉄壁のディフェンスの前にゴールを割ることができなかった。「メダル獲得」という目標はクリアしたが、最後に得点を挙げて一矢報いることができなかったのが悔やまれる。

ノルウェー 深刻な不調、最後に意地の銅メダル

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94年リレハンメル大会から5大会連続でメダルを獲得したノルウェーチーム

優勝候補の一角であったノルウェーは、予選では格下のイタリアに翻弄され、またスウェーデン戦はGWSにもつれ込むなど苦しんだ。エースのRolf Einar PEDERSENが今大会は不振だったこともあり、準決勝ではアメリカに完封負けを喫した。だが、3位決定戦ではカナダを相手にディフェンスに徹して体力を温存、最終ピリオドで一気に勝負に出た。周到な作戦が結果につながり、価値あるメダルを手にした。

今シーズン後半から、NHLでもヘッドコーチとして実績があるカナダ人のジョージ・キングストン氏がチームをサポート。今大会には出場していないが、若手選手も多数育ってきているといい、来季以降は新たなチーム構成で臨んでくることが予想される。

カナダがまさかの4位、パラ初出場国が健闘

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大会MVPには、カナダのポイントゲッター・Brad BOWDENが選出された

大会2連覇、またバンクーバー五輪のアイスホッケー男女に続く、ホッケー3冠を目指していたカナダは、まさかのメダルなしに終わった。その実力は自他ともに認めるところだが、ホームゆえのプレッシャーが、わずかな心のブレになってあらわれたことは否めない。

とはいえ、ナショナルチームはホッケーカナダの傘下にあるだけに、選手層も練習環境も世界随一。そのプライドにかけて仕切り直しをしてくるであろう来シーズンは、やはり怖い存在になりそうだ。

また、パラリンピック初出場のチェコが5位、韓国が6位と健闘した大会でもあった。

(取材・文/荒木美晴、撮影/吉村もと)