アイススレッジホッケー世界選手権Bプールは16日、最終日を迎えた。決勝戦に臨んだ日本はドイツに2-3で敗れ、準優勝に終わった。また、3位決定戦ではイギリスがエストニアを3-2で下した。この結果、日本とドイツ、イギリスの3カ国がソチパラリンピック最終予選(今秋開催予定)に進む。
●<決勝>日本 2-3 ドイツ
過去の対戦では、1点差の均衡した戦いでしのぎを削ってきた日本とドイツ。序盤はドイツのペースで進み、第2ピリオド8分にはディフェンスの穴を突かれて先制点を許した。さらにはキルプレーの場面から連続失点。日本の応援団で埋まった観客席からは、ため息が漏れた。
一矢報いたい日本は、最終ピリオド2分48秒に須藤悟(FW)がゴールを決めるが、終盤にまたもやペナルティによるキルプレーの場面でドイツに追加点を献上。残り時間1分半には、左サイドを突破した須藤からゴール前の三澤英司(FW)、高橋和廣(FW)とつないで意地の1点を入れるも、追いつくことはできなかった。
中北浩仁監督は、「悔しい」と一言。「(最終予選進出とAプール復帰という)ふたつの大きな目標は達成できましたが、決勝のようなタフの試合になるとまだまだミスが多い。きっちり修正して次につなげます」と話した。
優勝したドイツは、2006年トリノパラリンピックで4位と健闘。だが、その後は戦力を落としてBプールに降格。バンクーバー大会には出場できなかっただけに、ソチにつながる今大会にかける意気込みは強かった。その勝利への執着心は、喜びを爆発させたその姿から見てとれた。
どん底からの逆襲はじまる
日本は、敗れはしたが、収穫もあった。1年前はBプールに降格が決まり、目標を見失いかけたこともあった。だが、「子どもみたいですが、スレッジホッケーをやっている以上、やっぱりパラリンピックに出たいと思った」と三澤が話すように、どの選手もホッケーへの思いが変わることはなかった。
新人選手も加わり、今大会を目標に据え再スタートを切ると、「チームとして必要なことが明確になり、自然と選手同士のコミュニケーションが増えて集中もできるようになった」とキャプテンの須藤。
システムとしては、攻守ともに安定感のある須藤をディフェンスからフォワードにコンバートするなど、第1セットの得点力を強化。また、98年長野パラリンピックから代表として活躍するベテランの吉川守(FW)が引っ張る第2セットは、バンクーバー大会では出場機会が少なかった円尾智彦(DF)やバンクーバー後に代表に加入した熊谷昌治(FW)らが得点に絡むまでに成長し、また粘り強いチェックで相手の体力を消耗させる役割もこなしている。準決勝のエストニア戦では、このチーム一丸となったプレーで逆転勝利。Bプールとはいえ、第1・2セットの両方で点が取れているのは新チームのひとつの成果と言えるだろう。
最終予選で決まるパラ出場枠は「2」または「3」
ソチパラリンピックの出場枠は「8」。来月4月に韓国で開催される世界選手権Aプールの5位までが自動的に出場権を獲得し、6位以下の3チームが最終予選にまわる。そして、その3チームと今大会で出場権を得たドイツ、日本、イギリスの計6チームが対戦し、3位までがパラリンピックに出場できる。ただし、開催国のロシアがAプールで負け、最終予選に回ることになれば、上位2チームのみにしかソチへの切符が与えられず、よりシビアな争いになる。
●<3位決定戦>イギリス 3-2 エストニア
試合序盤はイギリスペース。少ないチャンスで着実に得点し、第2ピリオドを終えて3-1とリードした。対するエストニアは第3ピリオドに反撃を開始し、8分27秒には主力フォワードのKaido Kalmがゴールを決め、1点差に詰め寄った。
エストニアは試合終了の2分前にタイムアウトを取り、ゴールキーパーをベンチに下げて、6人攻撃をしかける。何度もイギリスゴールを脅かすが、最後までゴールネットを許すことができず、2002年ソルトレークシティ大会以来のパラリンピック復帰はならなかった。
■16日試合結果
<3位決定戦>
エストニア 0-1-1=2
イギリス 1-2-0=3
<決勝>
日本 0-0−2=2
ドイツ 0-2-1=3
(日本得点:①須藤 ②高橋 A三澤)
■最終順位
優勝 ドイツ
2位 日本
3位 イギリス
4位 エストニア
5位 スロバキア
6位 ポーランド
※MA SPORTSは、アイススレッジホッケー世界選手権Bプールの運営に協力しています。
(取材・文/荒木美晴、写真/吉村もと)