【DAY5】世界最強の剛腕・ラーマン登場! 今大会最重量の280㎏成功に大歓声

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シャフトもしなる重さに挑戦! 「世界一の力持ち」ラーマン・シアマンドの試技=北九州芸術劇場(撮影/植原義晴)

8日に開幕した「北九州2018ワールドパラパワーリフティングアジア‐オセアニアオープン選手権大会」は12日、最終日を迎え、男子107㎏級と107㎏超級、女子86㎏級と86㎏超級が行われた。

男子107㎏級

昨年の世界選手権2位のエンクバヤール・サノンヒジー(モンゴル)が第1試技でいきなり230㎏をマーク。猛追するイランのガブリシ・アリアクバルが第3試技でアジア新記録となる238㎏を成功させたのを見て、それを1㎏上回る239㎏に挑戦。会場中が固唾をのんで見守る中、完璧に挙げ切り、見事な優勝を果たした。エンクバヤールは「金メダルが獲れて嬉しい。アジアパラ競技大会では、今の記録を更新したい」と話した。

好調を維持する中辻。2020年に向けて「1㎏でも重く挙げていく」

197gの日本記録を持つ日本の中辻克仁(個人)は、第1試技で188㎏を余裕を持って成功させる。続いて194㎏もクリアし、第3試技では自己ベストとなる198㎏をマークした。練習拠点のNTC(サン・アビリティーズ城陽)には4方向からフォームを確認できる動作解析の映像機器が設置され、「フォームが大きく崩れることはなくなった」と成長を実感。約1年ぶりの記録更新に手ごたえを感じていた。

日本人初の「200㎏成功」を期待される中辻。昨年の世界選手権では第2、第3試技でその200㎏に挑戦したが、惜しくも成功判定されなかった。200㎏成功のカギは「疲労を残さないトレーニングをすること」だといい、世界的指導者のジョン・エイモス氏が作る専用メニューに取り組む。今大会は直前の感覚や体調を考慮して198㎏に留めたが、10月のアジアパラでは体調次第で挑戦もありうる。その日を楽しみに待ちたい。

男子107㎏超級

観客席から飛ぶ声援に応えるラーマン

310㎏という前人未到の世界記録を持つ「世界一の力持ち」、ラーマン・シアマンド(イラン)が登場。ライバルたちが230㎏台からスタートするなか、ラーマンは第1試技で270㎏を申告。260g以上で使用される「50㎏」と書かれた黒のウエイトが今大会初めて登場し、会場がどよめくなか、なんなく成功。続いて280㎏も完璧に押し上げた。第3試技では285㎏に挑戦するも、惜しくも認められず。思わず会場からため息が漏れたが、大会最重量を挙げたヒーローに、大きな拍手と声援が送られた。

このラーマンに憧れる日本の19歳、ジュニアの松崎泰治(順天堂大)は136㎏をマークした。狙っていた138㎏の自己ベスト更新は叶わなかったが、第2試技でバーを下す際の揺れと止めの時間が短いというミスを、第3試技でしっかりと修正した。

目指すのは、「誰が見ても綺麗な試技で3本そろえること」。練習に励み、来月のアジアパラでも、高みを目指すつもりだ。

女子86㎏級・86㎏超級

86㎏級の優勝争いは、リオパラリンピック4位のリ・フェンメイと昨年の世界選手権2位のゼン・フェイフェイの中国対決に。ゼンが先にアジア新記録を樹立すると、直後にリがそれを2㎏上回る138㎏に成功。ゼンは第3試技で同記録に挑戦したが失敗し、リの優勝が決まった。また86㎏超級も、中国のデン・ヒュメイが146㎏を成功させ、アジア記録を更新した。

すべての競技が終わり、見えてきたのは中国の圧倒的強さ。男女各10階級のうち、男子は5階級、女子は実に8階級を制し、存在感を見せた。日本は、男子88㎏級の大堂秀樹が銅メダルを獲得している。

(取材・文/荒木美晴、写真/植原義晴)