チャンネル4によると、開会式は1億1200万人、閉会式は7700万人、パラリンピック期間中の平均視聴者数は5900万人だという。イギリスの全人口が7000万人弱なことを考えると、驚異的な数字だ。
パラリンピック閉幕の翌日の9月10日、ロンドン市内で800人以上のオリンピック・パラリンピック選手が21台のトラックの荷台をとりはらった山車でパレードを行った。翌11日付けの新聞各紙の一面にパレードの写真を掲載。その半分近くが「Thanks a million」(100万人の大観衆に100万回の感謝を)と大きくうたっていた。
パレードは13:30にマンションハウスを出発。セントポール寺院やトラファルガー広場などをゆっくりと進んだ。パレードの最後には機体のおなかに「Thank you」と書かれた英国航空の特別仕様機がバッキンガム宮殿の外のクイーンビクトリアメモリアルの上を飛び、フィナーレを飾った。
イギリスは、オリンピック・パラリンピックあわせて185個のメダルを獲得。今大会は、チームGB(グレートブリテンと北アイルランド・オリンピックチームのために英国オリンピックの協会と英国パラリンピック協会によって1999年以降使われている名称)の大活躍が市民を熱狂させた。オリンピック自転車競技のサー・クリス・ホイ選手は、「我々選手にとって、今日はみんな(観衆)の顔を見られる初めてのチャンス。何万もの人が笑って手を振ってくれている。信じられない光景だ。一生忘れない」。
観客にとってもオリンピック・パラリンピック両方の選手を一同に見られる最初で最後のチャンスだ。最初の山車で、オリンピック選手モー・ファラがすっかりおなじみになった頭の上に両手をのせる猿のようなポーズ「モボット」をすると、観衆も一斉に同じポーズをし、一部の新聞には「モボット軍団」として写真が掲載された。
パラリンピック・レーサー競技のデビット・ウィアーはこう話した。
「僕らはあのウサイン・ボルトすら霞ませてしまった」
パラリンピック期間中に行われたボルトの記事よりもパラリンピックが一面報道だったことに対して、笑いを抑えきれない様子だ。「僕たち選手はいつも、“僕らは世界レベルのアスリートだ”って話しているし、この11日間でそれを証明できた。今回の大会は間違いなく今までのパラリンピックとは違う新しい流れを作った。パラリンピックが福祉ではなくスポーツとして受け入れられてきている」
パレードの終わりには来賓のスピーチがあった。ここでも話題をさらったのは、ロンドン市長ボリス・ジョンソンだ。首相デビッド・キャメロンの儀礼的な話に対し、「オリンピック・パラリンピックベビーブームが来るね」などと笑いをちりばめた彼のスピーチは観衆の心をつかみ「ボリス」コールが沸き起こった。ボリスは次期首相の座を狙っているとみられ、新しい闘いがここでもはじまる。
(取材・文/加々美美彩)