【最終予選】復活日本、掴んだ平昌への切符。2大会ぶり出場に中北監督も涙「いいチームになった」

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日本代表は第3戦のスロバキアに勝利し、自力で平昌パラリンピック出場を決めた=エステルスンド・アリーナ(撮影/荒木美晴)
日本代表は第3戦のスロバキアに勝利し、自力で平昌パラリンピック出場を決めた=エステルスンド・アリーナ(撮影/荒木美晴)

パライアスホッケーの平昌パラリンピック最終予選に出場している日本代表は13日、第3戦でスロバキアと対戦。4-2で日本が勝利した。初戦のドイツ、2戦目のスウェーデンに2連勝した日本は、11日の他の試合の結果、2010年バンクーバー大会以来、2大会ぶりのパラリンピック出場を決めた。ただ、13日の朝まで大会側から公式のアナウンスは届かず。「実感がわかない」と話していた選手たちだったが、このスロバキア戦の勝利で勝ち点を「9」に伸ばし、“文句なし”の出場権獲得に喜びを爆発させた。

■日本 4-2 スロバキア

日の丸をつけた氷上のヒーローたちは、スロバキア戦でも、今のチームを象徴する先制点を挙げ、あとがない相手に強さを見せつけた。

スレッジの下にパックを通してシュートを放つ堀江。DFからコンバートされ、しっかりと役目を果たした
スレッジの下にパックを通してシュートを放つ堀江。DFからコンバートされ、しっかりと役目を果たした

第1ピリオド、熊谷昌治(長野サンダーバーズ)が相手DFを引きつけてゴール前の堀江航(長野サンダーバーズ)にパス。堀江はスレッジの先端を持ち上げパックを右手側に通す技ありシュートを決めた。試合開始45秒の出来事で、これが相手にダメージを与えた。2点目は左サイドから須藤悟(北海道ベアーズ)が矢のようなロングパスをゴール前に通し、詰めていた児玉直(東京アイスバーンズ)がきっちりと合わせてゴール。3点目は相手ゴール裏からの堀江のパスを熊谷がワンタッチで押し込み、リードを広げた。

第2ピリオド以降は、相手の両足切断の選手のクイックネスな動きとスピードに対応できず、後手に回る展開が続き、最終ピリオドには2点を献上してしまうが、相手のペナルティによるパワープレーのチャンスで再び堀江がゴールを決め、突き放した。

悔しさ糧に、7年目の結実

バンクーバー大会から7年越しのリベンジを果たすまでを、中北浩仁監督は「すごく長い道のりだった」と振り返る。前回のソチ大会は最終予選でまさかの敗退。その後は引退や故障で選手が減り、3セットを組めない時期もあった。海外勢との試合でも黒星続き。長いトンネルの中をさまようような、崖っぷちの期間を経験した。それでも彼らは、その先に見える光を目指し、前に進むことを決してあきらめなかった。「絶対に、パラリンピックに行く」。そう信じてやまない選手たちを、コーチやトレーナーらスタッフも、全力で支え続けた。

今大会、ここまで2得点と活躍している児玉。経験を吸収し、成長を遂げている
今大会、ここまで2得点と活躍している児玉。経験を吸収し、成長を遂げている

仕事で海外在住の中北監督が不在時は、高橋泰彦・町井清両アシスタントコーチが指導に当たった。今年からは、中北監督と旧知の仲である元日本代表GKの信田憲司氏も指導に加わり、サポートした。「私が日本を離れる時期、アシスタントコーチの皆さんが、私の目が届かなかった選手たちの底上げをどんどんしてくれた。それがチームの力になった」と感謝を口にする。事実、若手選手の児玉は、第2セットのフォワードで起用されると、初戦のドイツ戦、また今日のスロバキア戦でも得点し、期待に応えた。チャンスをモノにし、大きくレベルアップしていく今、児玉自身も「スポンジが水を吸うように、先輩たちがやろうとしていることがわかるようになってきた」と話す。

14日に対戦するチェコは、スウェーデンに勝利して勝ち点「9」とし、日本とともに平昌パラリンピック出場を決めている。明日の試合では勝利したほうがランキング6位、負けたほうが7位となり、パラリンピック予選では同じグループに入り、再び戦うことになる。中北監督は、「平昌を占う大切な試合。互いにメッセージを送ることになる。頑張りたいと思います」と意気込みを語った。

パラリンピック出場を決めた選手のコメント

三澤が抜けた穴を全力でカバーしている須藤。その背中でチームを引っ張る
三澤が抜けた穴を全力でカバーしている須藤。その背中でチームを引っ張る

須藤悟(DF)キャプテン
「今大会の出来を左右する初戦を取ったことがすべて。緊張感があるなかで結果を出せたのはチームの成長と言えるし、今日の試合でも勝ち点を確実に取れて、本当に良かったと素直に思います」

堀江航(FW)
「この4年間のうち、2年間お休みしていた。その間に須藤、英司(三澤)、カズ(高橋)、クマ(熊谷)、ヨッシー(吉川)とか、そういうメンバーが頑張ってくれていた。そこに児玉も力をつけて、大祐(上原)が入ってチーム力が上がった。それが(結果の)要因だと思います」

3試合を終えて、4ゴール2アシストをマークするエースの熊谷
3試合を終えて、4ゴール2アシストをマークするエースの熊谷

熊谷昌治(FW)
「ようやく(パラ出場権獲得を)実感できた。パラ出場を叶えることはずっと夢だったので、本当にうれしい。この4年間、悔しい思いを持ちながら、ホッケーに対して絶対に手を抜かなかった。監督にもエースと言ってもらえるようになって、重圧はあったけれど、努力が実りました」

高橋和廣(FW)
「4年間、長かった。苦しかったけれど、みんなを信じて、チームを信じて続けてきた努力が形になった。(前回の最終予選で負けた)ドイツとスウェーデンには借りを返した。ここで悔しい思いを払しょくできたのは大きいです」

福島忍(GK)
「3連勝で決めて、やった!という感じ。60歳の自分がスタメンマスク。自分は試合に出れば、チームに貢献するだけだけど、これで(セカンドだった)望月が『次は俺が取ってやる!』と悔しがってくれたらいい。2大会ぶりのパラリンピック出場は意味がある。冬季競技もこれで少しは盛り上がると思う」

■チェコ 4-3 スウェーデン

スウェーデンに勝ったチェコが3勝で、平昌パラリンピックの出場権を獲得。日本も切符を手にしたため、残りは「1」枠。今日の試合で敗れたスロバキアは残念ながら脱落。14日の第1試合、ドイツ対スウェーデンの直接対決で、勝った方がパラリンピック出場となる。

(取材・文・撮影/荒木美晴)