陸上 — 2021/4/24 土曜日 at 23:23:48

【ジャパンパラ】辻が日本新で400mを制す「後半に失速しない走りができた」

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右腕の義手をはずし、おもりを着けてレースに臨み、2種目を制した辻(中央)=屋島レクザムフィールド(撮影/植原義晴)

東京2020パラリンピックの代表最終選考会を兼ねる「2021ジャパンパラ陸上競技大会」が24日、香川県高松市の屋島レクザムフィールドで開幕した。

女子400m(上肢障害T47)は、リオ2016パラリンピック銅メダリストの辻沙絵(日体大教)が58秒45の日本記録で優勝。冬季の走り込みやスピード練習の成果が出て、「後半に失速しない走りができた」と振り返った。これまで右腕に義手を装着してレースに出場していたが、今回は160gのおもりを巻いて走った。義手を着けることで左右のバランスは保てるが、右腕の可動域が狭くなり、肘から鎖骨の筋肉の負担が大きく、しびれることもあった。そこで助言を受けておもりに変えたところ、思い切り腕を振り切れてストライドも広くなり、フォームも安定したという。2年以上、ベスト更新ができない日々に苦しんだ時期もあったが、辻は「あきらめなくてよかった」と笑顔を見せていた。

男子1500m(T20 )でアジア新記録で優勝した赤井(右から2人目)

男子1500mのT37(片まひなど)は井草貴文(ACKITA)が4分29秒80、またT20(知的障害)は赤井大樹(十川ゴム)が3分53秒35で、それぞれアジア新で優勝した。

注目の男子100m(切断などT64)は、好調の大島健吾(名古屋学院大)が11秒37のアジア新記録で制し、東京パラ代表に前進した。この1年、パラ出場権獲得を目指して100分の1秒を争ってきたライバルの井谷俊介(SMBC日興証券)との最後の直接対決。レース後、0.29秒上回ってゴールした大島に、2着の井谷が手を差し出した。「速いな、と言ってもらい、嬉しかった。井谷さんの気合も感じていたし、僕も井谷さんに勝つために気持ちを引き締めて臨んだ」と語り、汗をぬぐった。

その大島はミックスユニバーサル4×100mリレーにもエントリー。1走・山路竣哉、2走・大島、3走・高松佑圭、4走・村岡桃佳がタッチをつなぎ、49秒84をマークした。

新保は東京パラの出場と活躍を亡き恩師に誓う

男子円盤投げ(F37)は、新保大和(日体大)が47m64で制した。自己ベストの48m02には及ばず、「もう一押しが足りない」と反省を口にするが、終始安定した投擲で好調さをうかがわせた。新保は生まれつきの脳梗塞による脳性麻痺で左半身に動きづらさが残るものの、中学の陸上部で投擲種目をスタート。在学中に顧問の先生にパラ陸上を紹介され、高校時代はインターハイ出場を目指しながら、パラ陸上の競技会にも出場した。

顧問の先生は新保が高校2年の時に病気で亡くなり、初出場したパラ世界ジュニアの日本代表ユニフォーム姿を見せるという約束は叶えられなかった。それから数年が経ち、東京パラランキングでは8位につけるなど、世界のトップ選手のひとりに成長した新保は、「先生に出会っていなかったら今の自分はいなかったかもしれない。そろそろ恩を返さないと」と、恩師への感謝を胸に、夏の大舞台に向けてさらなる飛躍を誓っていた。

(取材・文/荒木美晴、撮影/植原義晴)