「WPA公認 第33回日本パラ陸上競技選手権大会」は12日、神戸総合運動公園ユニバー記念競技場で最終日を迎えた。
昨年の東京パラリンピックはトライアスロンと車いすマラソンの2競技に出場し、パリ大会は車いすマラソンでの挑戦を公言している土田和歌子(ウィルレイズ)が、スプリント力を養うため2016年以来のトラックレースに復帰。女子1500m(T54)を3分32秒38で制した。「28年ぶりに走った」という女子100m(T54)は3位だった。種目を車いすマラソン一本に絞ったことについて、「東京パラで車いすマラソンに出場し、世界の競技力向上を感じた。私も競技レベルを上げて、自分の力を試してみたいという想いが募った」と土田。マラソンレースが本格化する秋までに短・中距離走を重視し、走力につなげていくつもりだ。
佐藤友祈(モリサワ)は、東京パラリンピックで金メダルを獲得した男子400mと1500m(T52)を制した。今大会は男子100mにもエントリーして3位だった。次回のパリ大会は1500mが実施種目から外れることから、今年の春に100mへの挑戦を決意。5月のジャパンパラで初レースを走ったあと、スプリントメニューに集中的に取り組み、今大会は自己ベストとなる18秒03をマークした。強化の結果、これまでより短い距離でトップスピードに乗れるようになるなど、400mにも好影響を与えているといい、今後のレースに注目が集まる。
男子やり投(F46)は高橋峻也(トヨタ自動車)が1投目で59m80をマーク。東京パラリンピック日本代表の白砂匠康(あいおい)と山﨑晃裕(順天堂大職員)を抑えて優勝を果たした。高校時代、右腕に障害がありながら甲子園に出場した高橋は、大学でやり投を始めた。目標だった東京パラリンピック出場は叶わなかったが、冬場に取り組んだ助走の加速を意識したスピード練習の成果があらわれ、5月のジャパンパラでは61m24の大投てきで日本新記録を樹立するなど、好調を維持する。
パリ大会でのメダル獲得を目標に掲げる高橋は、「表彰台に乗るには63mから64mが絶対条件になってくる。強化の成果で練習のアベレージがいつも以上に良いので、今年中もしくは来年の春あたりには出せるようにしたい」と力強く語った。
女子走幅跳(T12)は、東京パラリンピック5位の澤田優蘭(エントリー)が1回目の跳躍で5m08をマークして優勝した。澤田は初日の100mを右脚の不調で棄権していたが、この日は痛みが緩和されたため出場を決めたといい、競技開始直後から向かい風が吹く難しいコンディションながら、6本すべてを跳びきった。澤田が2月から所属するエントリーは、ガイドを務める塩川竜平さんとも業務委託契約を結び、これまで以上に二人三脚で練習する時間が増えた。「今季は初戦でマークした5m30くらいの記録を安定して出すことと、(5m70の)自己ベスト更新を目指していく」と澤田。新たな環境のなかで、パリ大会に向けた強化に臨んでいく。
(取材・文/荒木美晴、撮影/植原義晴)