「WPA公認第34回日本パラ陸上競技選手権大会」の競技2日目が30日、神戸総合運動公園ユニバー記念競技場で行われた。
上肢障害(F46)の男子やり投は、東京2020パラリンピック6位の白砂匠庸(あいおいニッセイ)、同7位の山崎晃裕(順天堂大職員)、日本記録保持者の高橋峻也(トヨタ自動車)の三者の争いに注目が集まった。1回目の投擲で高橋が57m61をマークすると、4回目で山崎がそれを上回る58m37を記録し、7月の世界選手権の派遣標準記録を突破。白砂は5回目で55m74とふたりに迫った。最後の一投はそれぞれ距離を伸ばせず、山崎が1位となり、世界選手権の日本代表に内定した。
試合後は「逆転勝ち。めちゃくちゃ嬉しい」と安堵の表情を見せた山崎。5年前に左の腹斜筋を痛め、故障を抱えながら東京パラに出場したものの、「満たされなかった」。筋力はまだ戻り切っておらず、復帰は厳しいのではないかと思うほどにネガティブになった時期があったが、身体の使い方の工夫と地道なトレーニングで改善しつつあるという。世界選手権では「4位以内に入って、パリパラリンピックにつなげたい」と力強く話した。また、敗れた高橋は「悔しいの一言。山﨑選手の記録をはやく抜きたいと焦ってしまった」と反省を口にした。
視覚障害(F12)のやり投は、若生裕太(電通デジタル)が5回目に60m03をマークし、5連覇を達成。世界選手権の日本代表に内定した。
上肢障害(T46)の男子100mは石田駆(トヨタ自動車)が自己ベストには届かなかったものの、11秒00の大会新記録を樹立。「スタートは良かったけれど、後半はブレてしまった。まだ伸びしろを感じる。今シーズンは10秒台後半を狙っていけたら」と話した。隣のレーンを走ったT45の三本木優也(京都教育大)はクラスは異なるがライバルとしてしのぎを削っている間柄。「彼の存在がレースにとってとても大事。モチベーションアップにつながっている」と話す。
その三本木は今回のレースでは11秒28に留まった。レース後は涙を浮かべながら「悔しい。調子が良かったから、(自己ベストに届く)10秒台を出せると思っていた」と振り返る。世界選手権の派遣標準記録は突破しており、「代表に選考されたら、あと2カ月しっかり練習を積んでメダルを獲りたい」と切り替え、前を向いた。
視覚障害(T13)の男子100mは、川上秀太(アスピカ)が10秒98のアジア新記録で優勝した。今月の愛知パラ陸上で10秒81の好タイムをマークしており、「確実に10秒台を出せる感覚を掴めた」と言葉に力を込めた。また、健常者の日本選手権出場も見据えているといい、「10秒3~4台を目標にしている。そこからパラの記録につなげたい」と語った。川上は200mも制した。
(取材・文/荒木美晴、撮影/植原義晴)