東京・世田谷区の馬事公苑で開かれている「第4回全日本パラ馬術大会」は28日、最終日を迎え、音楽に合わせて決められた運動をオリジナルの経路で演技する「フリースタイルテスト」が行われた(本来は個人課目の成績上位者のみが出場できる。今回は事前エントリーした選手の中で順位をつける形で行われた)。
4人馬がエントリーしたグレードⅡは、大川順一郎(蒜山ホースパーク/鳥取大乾燥地研究センター)&童夢号がリオパラリンピック代表の宮路満英(リファイン・エクインアカデミー)、20歳の吉越奏詞(四街道グリーンヒル乗馬クラブ)という強化指定選手を抑えて、得点率63.122で優勝した。
来月25日に61歳となる大川は、大学時代は馬術同好会に所属し、障害馬術などで国体に出場した経験を持つ。2017年に大腿部や手指の筋肉が萎縮し、筋力が低下する進行性の指定難病「封入体筋炎」を発症。肩を落としていたところ、周囲の勧めでパラ馬術に挑戦しはじめた。これまで病気の影響で臀部の筋肉が少なくなり、深刻な鞍ずれに苦しんでいたが、今大会の1カ月前から騎乗時の反動の衝撃を和らげるシートセーバーを使用するようになり、安定したパフォーマンスが出せるようになったという。「今大会も使用許可を得て臨んだことで、結果につながったと思う」と大川は笑顔を見せる。
演技の前半は、ゆったりとした常歩運動、一転して後半はリズミカルな速歩運動で魅せ、芸術点でも高評価を得た。「過去の成績から考えるとありえない好成績。まだ信じられない気持ちだけど、童夢号がどんどん前に行ってくれて、結果的に活発に運動したところを評価してもらったのかなと、うれしく思っている」と、相棒の白馬に思いを馳せた。
「私は強化指定選手でも育成選手でもない。自分の実力はよくわかっている」と話す大川が見据えているのは、4年後のパリパラリンピック出場だ。普段はリオオリンピック馬術日本代表の原田喜市選手が代表を務める、岡山県の蒜山ホースパークで練習を重ねる。今後はCPEDI(国際馬術連盟の国際大会運営基準に則って開催される競技会)にエントリーして自己記録更新を目指しつつ、「私と童夢号を受け入れてくれた原田さんと一緒に、オリンピックとパラリンピックに行けたらいいな。60代のおじさんの代表として、自分にチャレンジするつもりで続けていきたい」と力強く話し、前を見つめた。
(取材・文/荒木美晴、撮影/植原義晴)