4年ぶりの開催となる「ヒューリック・ダイハツ Japanパラバドミントン国際大会2023」が7日、国立代々木競技場第一体育館で開幕した。パリ2024パラリンピック選考の対象大会のひとつで、37の国・地域から、約220人が参加。各クラスで頂点を競う。日本からは男女合わせて21人がエントリーしている。
男子車いすは飯塚・大山が初出場
7日は各クラスの予選ラウンドが行われ、今大会初出場となる次世代アスリートも奮闘した。WH1の飯塚裕人は、高校でバドミントンを始め、大学ではサークルでシャトルを追った。4年の時にバイク事故により車いすとなり、2019年からパラバドミントンをスタート。今季から海外の大会にも参戦している27歳だ。この日は男子シングルスは1勝1敗とし、大山廉織と組む同ダブルスは、東京パラリンピック金メダルペアで、先日の杭州アジアパラ競技大会も制した屈子墨 ・麦建朋(中国)組に敗れた。一日3試合とハードなスケジュールだったが、ダブルスでは最強ペアとの対戦からショットの精度の高さや忍耐力などを学んだ。飯塚は「チャンピオンの中国ペアと対戦できただけでも出場した意味がある」と話し、2日目以降に気持ちを切り替えていた。
大山はWH2のエントリー予定だったが、今大会のクラス分けでWH1になった。大山もバドミントン経験者で、2019年に病気のため車いすとなり、2021年からパラバドミントンに取り組んでいる。この日は、男子シングルスで初対戦のチェコの選手にストレート勝利。この勢いに乗り、8日は第1シードのThomas WANDSCHNEIDER(ドイツ)に挑戦する。
成長著しい女子選手たち
女子WH1の17歳・友寄星名は、シングルスで東京パラと杭州アジアパラの銅メダリスト・尹夢璐(中国)と対戦。前後に揺さぶられストレートで敗れたものの、「ラリーで粘ることはできた」と前を向く。先天性の二分脊椎で、中学1年の時に部活動で競技をスタート。高校2年の現在は、週に5~6回は放課後にパラバドミントン専用コートのヒューリック西葛西体育館で、男子の飯塚や大山らとともに練習に励む。同じクラスには絶対女王の里見紗李奈がいる。「学ぶところがたくさんある。尊敬しているし、いつか追いつくことを目標に頑張りたい」と話す。
同SL4の澤田詩歩は、先天的な両手指欠損と右脚ひざ下欠損で競技用義足をつけて戦う。2021年のアジアユースパラ競技大会(バーレーン)のシングルスで金メダルを獲得した期待の19歳で、今季からツアーに参戦している。今大会の初戦はインドの選手にストレートで勝利。「一つひとつのプレーを全力で臨みたい。ベスト4に入ることが目標」と語り、前を見つめた。
同SL3のシングルスには、19歳の束原菜々香と20歳の武田佳乃がエントリー。今年4月に日本パラバドミントン連盟が開いた体験会にそれぞれ参加し、「たまたま障がいクラスも年齢も同じ(同級生)だった」(武田)。ふたりにとっては今大会がパラバドミントンの初公式戦。初戦はそれぞれ敗れたが、貴重な一歩を踏み出した。
畠山に続け! 上野が国際大会デビュー
男子SH6の20歳・上野智哉にとっても、今大会が初めての国際大会。もともと趣味でラケットを握っていたが、東京パラで正式競技に採用されて本格的に取り組み始めた。初戦は中国の選手に敗れ、「緊張して、いつもの動きができなかった」と反省を口にする。相手は杭州アジアパラでもプレーしており、パワーやフットワークの速さの違いを感じたという上野。「自分はパワーがない分、ドロップでつないでラリーに持ち込む。そういうプレーを武器に頑張りたい」と話し、前を向く。
低身長のSH6クラスは、畠山洋平がただひとり、長期間にわたってけん引してきた。競技人口が少ないことがこのクラスの課題であったが、地道に選手発掘と育成を続け、今大会はようやく2名のエントリーとなった。畠山は「上野選手と同じ大会に出られるのは嬉しいこと。いつかダブルスを組んで試合に出てみたい。彼はまだ次世代選手だけど、はやく追いかけてきてほしい。もちろん、僕は負けませんが」と笑顔で話していた。
(取材・文・撮影/荒木美晴)