「木下グループジャパンオープンテニスチャンピオンシップス」の車いすテニスの部が15日、大阪市のITC靭テニスセンターで開幕した。国内でWTA(女子テニス協会)ツアー公式戦に車いすテニスの部が同時開催されるのは初。世界ランキング2位で全米オープン女子シングルス準優勝の上地結衣(三井住友銀行)、同じく全米オープンに出場した田中愛美(長谷工コーポレーション)、船水梓緒里(ヤフー)ら、日本人8選手がエントリーしている。トーナメントディレクターを国枝慎吾氏が務める。
シングルス1回戦で熱戦となったのが、須田恵美(DC1)対 佐原春香(浦安ジュニア車いすテニスクラブ)のカード。スコアこそ6-2、6-3のストレートで須田が勝利したが、第1セットの第1ゲームから長いジュースが続き、試合時間は2時間半を超えるタフマッチとなった。敗れた佐原は「これまで守りのテニスが多かったけれど、自分から攻めてテンポを速くしたり工夫して戦えた。負けてしまったけれど、この経験を次の大会に活かしたい」と振り返った。
20歳の佐原は先天的な小児がんの影響で、腹筋と背筋が弱く、車いすテニスプレーヤーのなかでは比較的障害が重い。長年世界のトップに居続ける上地、また自分と同様に障害の程度が比較的重いが世界のトップで戦う大谷桃子(かんぽ生命)が憧れだといい、「切り拓いてきた先輩たちのすごさを感じながらプレーしている。今後、日本である大会は出て、ランキングを徐々に上げていきたい」と話し、前を向いた。
第1シードの上地は19歳の岡あずさを6-0、6-0で下し、準決勝に駒を進めた。試合はセンターコートに次ぐ規模の第1コートで行われ、大勢の観客が見守った。ワイルドカードで出場する岡にとっては「初めての光景」だったといい、「自分のいいプレーにも拍手をもらえて力になったし、全力で戦いたいと思った。憧れの上地選手と戦ってすごく勉強になったし、プロのすごさを感じた」と興奮気味に話した。
兵庫県出身の上地にとって、今回の会場は小学生の時から試合をするなど「地元」といえる場所。ファンはもちろん、顔見知りの人たちが大勢会場に来ていたといい、「グランドスラムより緊張したかも」と笑う。WTAの大会で初めて車いすの部が実施されることについては、「私たちがいいパフォーマンスをすることで、来年も継続しようと言っていただけると思う。そこは私たち選手の使命ととらえ、全員でレベルを上げていかなければならないと思う」と語った。
第2シードの田中は佐々木千依に6-1、6-1で勝利。船水は深山知美を6-0、6-0で下した。
また、ダブルスの準決勝も行われ、船水・田中組が岡・佐原組を、また上地・佐々木組が深山・須田組をそれぞれストレートで下し、16日の決勝に臨む。
(取材・文/荒木美晴、撮影/植原義晴)