5月19日から福岡県飯塚市で開催されていた「2011飯塚国際車いすテニス大会(ジャパンオープン)」が22日に最終日を迎え、男子シングルス決勝で国枝慎吾(ユニクロ/千葉)が斎田悟司(千葉)を6-0、6-1で破り、大会6連覇を達成した。国枝は斎田と組んだ男子ダブルスでも優勝した。また、混戦の女子ダブルスは、上地結衣(兵庫)/マージョレン・バイス(オランダ)組が制した。
ジャパンオープンは、ITF(国際車いすテニス連盟)公認の「NEC車いすテニスツアー」スーパーシリーズのひとつ。毎年、国内外からトップクラスの選手が集結するビッグトーナメントだが、今年は東日本大震災の影響で昨年は38人だった海外選手のエントリーが20人と少なく、参加者数も昨年の約3分の2に減った。それでも会場には、地元のみならず各地から大勢の観客が集まり、学生ボランティアが提案した「がんばろう日本! そのスマッシュでみんなに勇気を!」のスローガンのもと繰り広げられる熱戦を見守った。
注目の男子シングルスは国枝が圧巻の強さで優勝
男子シングルスの注目は、やはり6連覇がかかった国枝。準決勝で、若手の有望選手のひとりである眞田卓(埼玉)をストレートで下し、決勝では国枝とともに日本の車いすテニス界を引っ張るベテランの斎田と対戦。緩急をつけたショットと冷静な試合運びで主導権を握る国枝に対し、斎田はコースをついたサーブやリターンで応酬。会場をおおいに沸かせた。
だが、この日の国枝の強さは圧巻だった。「今大会はじめて納得いくプレーができた」というほど高い集中力をキープし、斎田に許したのはわずか1ゲーム。勝利の瞬間には両手でガッツポーズを作り、喜びを表現した。
国枝は、斎田と組んだ男子ダブルスでも決勝に進出。藤本佳伸(千葉)/ベン・ウィークス(オーストラリア)組を6-1、6-2のストレートで破り、単複2冠を達成した。
近日中に渡仏し、全仏オープン車いすの部に出場予定の国枝は、「全仏につながる質のいいプレーができた」と話し、全豪に続くグランドスラムの勝利に手ごたえを感じている様子だった。
17歳上地がダブルスで初賜杯
女子ダブルス決勝では、上地結衣(兵庫)/マージョレン・バイス(オランダ)組が、第1シードのオランダペアと対戦。1セット目を失ったものの、2セット目で競り勝ち、10点先取のファイナルセットタイブレークの末、接戦を制して優勝した。
上地は、17歳にして女子シングル日本ランキング1位。世界での飛躍が期待される高校2年生だ。今大会のシングルスでは3回戦でイエスカ・グリフォン(オランダ)に敗れたが、ダブルスで初めて決勝に進出し、初優勝。「入場のときに名前をコールされるのが緊張した」と振り返り、「バイス選手が最初に“声掛けをきっちりしよう”と言ってくれた」とパートナーのリードに感謝している様子。「優勝が決まってハイタッチした瞬間、うるっときました。自分はまだまだだけど、もっとトップ選手のプレーを見る機会を増やして、近づいていけたらと思っています」と話し、賜杯にとびきりの笑顔を見せた。
クアードは世界NO.1のワグナーが4連覇
また、女子シングルスはイエスカ・グリフォン(オランダ)が、クアードクラス(上肢にも障害があるクラス)はデヴィッド・ワグナー(アメリカ)がそれぞれ制した。ワグナーは大会4連覇。エイドリアン・ディールマン(カナダ)と組んだダブルスでも優勝しており、クアードクラスの単複ともに世界ランキング1位の実力を見せつけた。
大会終了後のチャンピオンズスピーチでは、国枝が「今大会を運営してくれた方々、サポートしてくれたボランティアの皆様に感謝します」と話したあと、海外選手に対して「(日本が大震災と原発の影響を受けている)このシチュエーションのなか、来てくれてありがとう」と英語でスピーチ。グリフォンとワグナーも、それぞれ日本語で「どうもありがとう」と応え、「また来年、イイヅカで会いましょう」と締めくくった。
(取材・文/荒木美晴・撮影/吉村もと)