フランスのローランギャロスで行われている全仏オープンテニスは4日、車いすの部が始まった。世界トップの7人とワイルドカード1枠の8名のみが出場できるグランドスラム大会のひとつ。日本勢は、男子は世界ランキング1位の国枝慎吾(ユニクロ)と三木拓也(トヨタ自動車)、女子は上地結衣(エイベックス・グループ・ホールディングス)の3選手が出場している。
グランドスラム初出場の三木が全仏で得たもの
男子シングルスは、三木が初戦で世界ランキング3位のREID(イギリス)と対戦。1-6、7-6(7)、4-6で敗れた。
序盤は動きに精彩を欠き、第1セットを落とした三木。第2セットは落ち着きを取り戻して、1-1となったところで雨のため試合が中断した。約3時間後に再開されてからも集中力を保った三木が、このセットをタイブレークで制した。そして、最終セット。一時は4-3とリードを奪ったが逆転を許し、勝利はならなかった。
「“いつも通り”と思って試合に臨んだけれど、そう思うこと自体、雰囲気にのまれていた証拠だなと。ボールに回転がかからず、オーバーになるショットも多かった。セカンドセットは切り替えができたが、もっと早くしないと」と唇をかんだ。
三木はグランドスラム大会初出場。今年は9月の全米オープン出場をめざして、北京・ロンドンパラリンピックで国枝を金メダル獲得に導いた丸山弘道コーチと練習を重ねてきた。積極的に世界ツアーを転戦し、トップ選手らと対戦した結果、8位まで世界ランキングを上げた。今回は、7位のJEREMIASZ(フランス)がケガで出場を取りやめたため、繰り上がりで出場を決めた。
3日の夜に行われた、2013年の世界ナンバーワンを表彰するチャンピオンズディナーでは、国枝に招待されてパーティーに出席した。ステージ上でスポットライトを浴びる国枝の姿を見て、大きな刺激を受けたという。三木にとって国枝は、テニスプレーヤーだった高校3年生の時に左足に骨肉腫を発症し、1年間の闘病生活を送っていたさなかに知った憧れの選手でもある。そして、今は同じ丸山コーチの指導を仰ぐ仲間であり、ライバルだ。「国枝選手と肩を並べ、いつか追い越せるように頑張りたい。そのために、目の前の一戦一戦を全力でプレーしていくだけです」。勝利はならなかったが、ここから三木の新しい歴史が始まる。
第1シードの国枝と上地は順当に勝ち上がり
女子シングルスの第一試合に登場した上地は、WHILEY(イギリス)と対戦。第1ゲームをいきなりブレークされたが、その後は安定感あるプレーで巻き返し、6-2、6-2で勝利した。21歳のWHILEYはダブルスのパートナーでもあり、同世代の上地とともに今後の女子をけん引していく存在だ。切磋琢磨するライバルとの一戦を制し、上地は「1回戦を突破してよかった」とホッとした表情を見せた。
男子シングルス第1シードの国枝は、PEIFER(フランス)に6-4、6-0で勝利。「序盤は身体も心も久しぶりに硬くなった」と振り返った国枝。ただし、その後は力まずに、自分のプレーに集中して試合をコントロール。さすがの修正力の高さを発揮した。
国枝が全仏オープンで優勝したのは2010年のこと。4年ぶりのタイトル奪取に向け、まずまずのスタートを切った。
男子ダブルスでは、国枝・三木組がHOUDET(フランス)・GERARD(ベルギー)組と対戦。5-7、6-3の1セットオールの接戦となり、勝負は10ポイント先取のスーパータイブレークへ。両ペアとも一歩も譲らず、最後まで息もつかせぬ攻防が続いたが、8-10で惜しくも敗れた。
【外部リンク→】国枝慎吾、4年ぶり全仏制覇に「秘策」あり
http://sportiva.shueisha.co.jp/clm/otherballgame/2014/06/04/post_288/
※国枝選手の全仏オープンへの意気込み、クレーコートの難しさなどがわかります!
(取材・文/荒木美晴、撮影/吉村もと)