車いすテニス — 2018/5/19 土曜日 at 0:29:34

【JAPAN OPEN】クアードはワグナーが8度目V! 女子ダブルスは上地組が優勝

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クアードシングルスはワグナーが5大会ぶり8度目の優勝=筑豊ハイツテニスコート(撮影/植原義晴)

「第34回飯塚国際車いすテニス大会(JAPAN OPEN)」は18日、上肢にも障がいがあるクラス・クアードのシングルス決勝が行われ、第1シードのデビッド・ワグナー(アメリカ)が前回王者のディラン・アルコット(オーストラリア)に3-6、6-2、6-3のフルセットで勝利した。ワグナーは昨年のリベンジを果たし、「すごく気持ちがいい」と笑顔を見せた。

第1セットはアルコットのペース。多彩な攻撃でワグナーにプレッシャーをかけた。対するワグナーは、序盤こそサーブの精彩を欠いたものの、第2セットが始まると集中力をキープ。第4ゲーム後に雨のため約45分にわたって中断したが、再開後も丁寧な配球でコントロールし、粘るアルコットを振り切った。

高いレベルでクアードを牽引するふたりは、ある意味、両極端のプレースタイルといえる。

ワグナーは、体幹が効かず、また手の握力が少ないため、ラケットと手をテーピングで固定してプレーする。クアードクラスのなかでも障がいの状態は重いほうだ。チェアワークやショットのスピードは出しにくいが、その分、対戦相手に対する分析力と戦略力、丁寧なラケットワークで正確にコースを突く技術の高さを武器に、長年頂点に君臨している。

クアード界を牽引するワグナー(右)とアルコット

一方のアルコットは、力強いストロークが特徴だ。左右に伸ばせば195㎝ある長い腕から繰り出す多彩なショットで、試合を構築していく。実は、彼は車いすバスケットボールのオーストラリア代表として北京大会で金メダル、ロンドン大会で銀メダルを獲得した実績もある。その後にもともと取り組んでいた車いすテニス界に復帰したわけだが、本人も「バスケで培ったチェアワークがテニスに活かされていると思う」と話すとおり、リオ大会ではコートを広く使った攻撃で単複優勝を果たしている。

近年では、さらに選手層のバリエーションが広がってきた。第3シードのヒース・デビットソン(オーストラリア)は腹筋機能があり、単複とも世界ランク上位をマーク。また日本人選手でも、頸椎損傷のため上肢にも障がいがある菅野浩二(リクルート)が昨年9月に男子からクアードに転向している。

今後、ますますの混戦模様が予想されるが、ワグナーは「スポーツにおいては、いろんな人がいるもの。コンディションも変化する。自分はその中で、100%のプレーに集中するだけだよ」と力強く話してくれた。

奥の深いクアードの世界。これからも彼らそれぞれの活躍に注目していきたい。

女子ダブルスは上地組が優勝!

上地とカッポッチがペアを組むのは2度目。カッポッチはスーパーシリーズ初優勝を果たした

女子ダブルス決勝では、上地結衣(エイベックス)/ジュリア・カッポッチ(イタリア)組が、ルーシー・シューカー(イギリス)/アニク・ファンクート(オランダ)組を1-6、6-2、6-2のフルセットで下し、頂点に立った。

また、男子ダブルス決勝に進出した国枝慎吾(ユニクロ)/グスタボ・フェルナンデス(アルゼンチン)組は、リオパラリンピック銀メダルペアのアルフィー・ヒューウェット/ゴードン・リード(イギリス)組に7-6、6-4で敗れた。

クアードダブルス決勝は、アルコット/デビッドソン組(オーストラリア)が6-4、6-0でワグナー/ブライアン・バートン組(アメリカ)を下した。

大会最終日の19日は、男女シングルス決勝が行われる。男子は国枝対リード、女子は上地対サビーネ・エラーブロック(ドイツ)のカードとなっている。なお、今年の大会から、男子シングルス優勝者に天皇杯、女子シングルス優勝者に皇后杯が下賜される。

(取材・文/荒木美晴、撮影/植原義晴)