「第34回飯塚国際車いすテニス大会(JAPAN OPEN)」は19日に最終日を迎え、男女シングルスの決勝が行われた。女子の上地結衣(エイベックス)は、サビーネ・エラーブロック(ドイツ)に6-0、6-4でストレート勝ちし、大会6連覇を達成。また、男子は第3シードの国枝慎吾(ユニクロ)が第4シードで前回王者のゴードン・リードに(イギリス)4-6、6-4、1-6で敗れた。
上地は昨年7月に競技用車いすを新調。座面を高くしたことで「これまでより走れるようになった」といい、相手の緩急をつけた配球にも対応できた。今大会は天候不良で試合が中断したり、改良したサーブに苦しんだりする場面もあったが、最後まで勝ち切り、ライバルたちに世界ランク1位の貫禄を見せつけた。
今大会から男子シングルス優勝者に天皇杯、女子シングルス優勝者に皇后杯が下賜されることになり、決勝戦前は「海外勢には渡したくない」と話していた上地。今日の勝利で実際に皇后杯を手にし、「車いすテニスにはクアードを含め、3クラスある。今回、男女に天皇杯・皇后杯が頂けることが、他にも多くの障がいを持ったプレーヤーがいることを知るきっかけになればいいと思います」と授与の意義について語った。
リードに敗れるも、国枝の力強さが復活
今年1月の全豪オープンで3年ぶりに優勝し、右肘の不調からの完全復活を遂げた国枝。今日の試合でもチェアワークを活かしたアグレッシブなプレーを随所に見せた。
だが、本人も認めるように、この日はリードのキレが一段上だった。リードは第1セットから最後までプレーに安定感があり、抜群のボールコントロール力が光った。とくに試合を通してリターンエースを量産してリズムを引き寄せたことが、勝利のポイントになった。
一方の国枝は、第2セット後半からは左利きの相手に有効なバックハンドのダウンザラインやフォアのクロスで巻き返したが、ファイナルセットはそのショットがわずかに甘くなり、主導権を握りきれなかった。
ただ、懸念されていた肘の具合は「まったく不安がない」という状況まで戻っている。大会最終日で疲労が残るこの決勝戦も、最後まで自分らしく攻めた。肘に負担のかかりにくいフォームに改良したバックハンドも最終調整段階に入り、ほかの強化項目にも時間が割けるようになってきた。つまり、まだまだ成長の余地があるわけで、”次の目標”と定める全仏オープンの頂点に向けても、「いい感じで臨めそう」と自信を覗かせていた。
ハイレベルかつ混戦模様の男子
優勝したリードは大会2連覇。「疲れたけれど、勝てて嬉しい」と笑顔を見せた。昨年は約2カ月間休養してランキングを落としたが、復帰後はしっかりと最前線に戻ってきた。リードは先週行われた韓国オープンでも優勝しており、コンディションの良さをうかがわせた。
男子の競技レベルは年々向上しており、トップ選手は誰が勝ってもおかしくないという、まさに群雄割拠の時代に突入している。
2020年東京パラリンピックは多くの選手にとって最大の目標になっているが、その東京までの2年の間に、ジュニア選手が急成長し、トップを脅かす存在になる可能性もある。車いすテニス界のレベル向上は、国枝やリードも「実感している」と話しており、選手同士の切磋琢磨によるさらなる競技発展に、より関心が高まりそうだ。
(取材・文/荒木美晴、撮影/植原義晴)