車いすバスケットボール — 2025/2/3 月曜日 at 18:31:47

神奈川VANGUARDSが天皇杯3連覇!

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神奈川VANGUARDSのアシスタントコーチ兼選手としてチームをけん引した鳥海。大会MVPを獲得した=東京体育館(撮影/植原義晴)

「天皇杯 第50回記念日本車いすバスケットボール選手権大会」が1月31日から3日間にわたり、東京体育館で開かれた。各地域の予選会を勝ち抜いた16チームによるトーナメント戦を行い、決勝で神奈川VANGUARDSが埼玉ライオンズを61-41で下し、3連覇を果たした。

王者が盤石の強さを発揮

前回大会は試合時間残り33秒で神奈川VANGUARDSが埼玉ライオンズを逆転し、劇的な優勝を飾った。それから1年、今大会は終始、神奈川VANGUARDSが主導権を握る展開となった。古澤拓也(3.0)が鮮やかな3ポイントシュートを決めてチームを勢いづけると、前回大会MVPの丸山弘毅(2.5)や途中出場の鳥海連志(2.5)も攻守で存在感を発揮。髙柗義伸(4.0)は40分間のフル出場を果たし、チーム最多の26得点と存在感を示した。キャプテンの前田柊(1.5)は「チームの戦術面はもちろんのこと、雰囲気づくりにも細かく取り組んできた。それが天皇杯で証明できて良かった」と、勝利を喜んだ。

また、鳥海は大会MVPに輝いた。今大会はアシスタントコーチを兼任。自分のプレーに集中しつつ、客観的に試合の展開を読み、とくにコート上でのディフェンス面でのコーディネートを担った。自身にとっても貴重な経験になったといい、「健常も含めて、とにかくたくさんの国内外のバスケットボールの映像を観た。自分たちのチームに合うより強度の高いディフェンスのスタイルを探すきっかけにもなったし、自分にとっても大きな学びになった」と振り返った。

準優勝の埼玉は新チームで奮起

決勝戦後は悔しさをこらえながら「来年は絶対に勝つ」と話した北風

埼玉ライオンズは1年前の悔しさを糧に強化に励んできた。前回大会終了後に主力の2選手がチームを離れたが、熊谷悟(3.5)と16歳の久我太一(1.5)が新たに加わり、新チームとして再始動。東日本第2次予選会で第1位となり、今大会に臨んでいた。準決勝では、富山県車椅子バスケットボールクラブ(以下、富山県WBC)を延長戦の末に下して決勝に進出。キャプテンの北風大雅(4.5)や健常プレーヤーの大山伸明(4.5K)は、ともに40分間のフル出場で最後までチームを盛り立てた。

北風は大会を振り返り、「イージーなミスもありリベンジできなかった。本当に悔しいが、新しいチームでもファイナルに行ける強さは見せられた。来年は3度目の正直として、必ず優勝する」と語り、涙を浮かべながら前を向いた。

3位はNO EXCUSE、4大会ぶり出場の富山県WBCも存在感

準優勝が6回、昨年4位のNO EXCUSEは激戦のブロックを勝ち上がった。準決勝で神奈川VANGUARDSに敗れたが、3位決定戦では58-38で富山県WBCに勝利。昨年から順位を一つ上げ、3位でフィニッシュした。前回大会後、埼玉ライオンズから朏秀雄(4.0)が移籍してインサイドの強さが増し、同じく日本代表の香西宏昭(3.5)らとのコンビで得点を重ねた。

富山WBCは経験豊富な宮島を柱に強敵を次々に撃破し、ベスト4の成績をおさめた

東海北陸ブロック第1次予選会で1位となり、4大会ぶりの天皇杯出場を決めた富山県WBCは、表彰台は逃したものの、大旋風を巻き起こした。東京2020パラリンピック銀メダリストの宮島徹也(4.0)がヘッドコーチを兼任。2017年の男子U23世界選手権代表の寺内一真(4.5)がキャプテンを務め、2024 IWBF男子U23アジアオセアニアチャンピオンシップ日本代表の小山大斗(3.5)、屈指のシューター・古崎倫太朗(2.5)ら実力派の若手選手も籍を置く。今大会は1回戦で過去11連覇の実績を持つ古豪・宮城MAXを、準々決勝で2年連続出場のSAGAMIFORTHを下し、トーナメントを勝ち上がった。準決勝は埼玉ライオンズに敗れたが、激しい攻防にひるまず、延長戦に持ち込む粘り強さを見せた。

宮島は、「この最高峰の舞台で戦えることを、みんなで楽しんでほしいと思っていた。チーム目標のベスト4をクリアできたのはよかった」と結果を評価し、「毎年、トップ4は強豪チームばかり。そこに富山がずっと食い込めるよう、頑張っていきたい」と、力強く語った。

(取材・文/荒木美晴、撮影/植原義晴)