「三井不動産 2023 ワールド車いすラグビー アジア・オセアニア チャンピオンシップ(AOC)」が29日、東京体育館で開幕した。8カ国が出場する来年のパリ2024パラリンピックのアジア・オセアニア地区から、出場権「1枠」を決定する重要な大会で、世界ランキング3位の日本は同8位のニュージーランドに51-40で、また同2位のオーストラリアに53-46で勝利し、開幕2連勝とした。今大会は同15位の韓国を含めて4カ国が参加。総当たり戦を2回行い、上位2チームが最終日の決勝に臨む。なお、日本のケビン・オアーHCは今大会後に退任することが決まっており、オアージャパンとしては最後の戦いとなる。
初戦のニュージーランド戦は大勢の観客や学校観戦で訪れた児童・生徒らが大声援を送るなかでスタート。日本はキャプテン池透暢(3.0)、池崎大輔(3.0)、今井友明(1.0)、若山英史(1.0)のハイローラインがスタメンを飾った。試合開始のティップオフはニュージーランドにボールを取られ先制点を許すが、その後は素早いタックルで相手のキャッチミスを誘い、ターンオーバーに成功。6点リードで迎えた後半も、次々とラインナップを入れ替えながら相手にプレッシャーを与え続け、試合の主導権を握る日本。ラスト1分間は残りのタイムアウトを有効に使い、残り0.3秒で池のインバウンドがトライライン前に詰めていた倉橋香衣(0.5F)に通り、51-40で勝利した。
試合後、池は「序盤から相手のやりたいことをやらせずに、終始、相手がゴールするのに時間がかかる状況を作れた。タイムアウトを削って日本のペースで進められたのはよかった」と話した。
また、2試合目の相手は、日本の最大のライバルであり、世界王者のオーストラリア。硬さが見られる日本は連携ミスなどからリズムをつかみ切れず、第2ピリオド終盤には相手の強いプレッシャーからターンオーバーを許し、23-26と前半で3点差をつけられた。
第3ピリオドは冷静さを取り戻し、残り3分で乗松聖矢(1.5)がインバウンドからスムーズにディフェンスに移行して、オーストラリアのエース、ライリー・バット(3.5)の動きを封じ、池が走って得点。ここからさらに守備を固め、連続ターンオーバーを奪って3連続得点を決めた日本。36-36の同点で迎えた最終ピリオドは早々に逆転に成功して勢いを増すと、さらに得点を重ね、最後は53-46で突き放した。
ケビン・オアーHCは、試合を振り返り、「乗松がディフェンスで違いを見せてくれたのがチームの助けになってくれた」と評価。その乗松は、「ライリーに対してどうチームで守っていくかが課題だった。走られたところもあったけれど、そのなかで手ごたえがあるディフェンスを見せられたのはよかった。細かい車いす操作など、練習の成果が出たと思う」と、力強く語った。
(取材・文・撮影/荒木美晴)