パラアイスホッケー — 2024/2/14 水曜日 at 10:47:18

世界選手権に向けて強化中! Aプールでの勝利を目指す日本代表

by
世界選手権に向けて強化を図るパラアイスホッケー日本代表=やまびこの森アイスアリーナ

パラアイスホッケー日本代表が、5月の世界選手権に向けて強化に取り組んでいる。

昨年10月にカザフスタンで開かれた世界選手権Bプールで全勝優勝を果たし、Aプールへの返り咲きを決めた日本代表。はやくも今年5月には、そのAプールの世界選手権がカナダで開催予定で、チームの士気が高まっている。2026年のミラノ・コルティナダンペッツォパラリンピックに出場する8カ国は、25年の世界選手権Aプールの順位と最終予選の結果で決まる。今年の世界選手権では最低でも6位以上に入ってAプール残留を決め、来年の大一番へとつなげたいところだ。

2大会ぶりのパラ出場を目指す日本代表は、22年に元カナダ代表のブラッドリー・ボーデン氏をハイパフォーマンスディレクターに招き、世界レベルのスレッジコントロールなどを学んでいる。23-24年シーズンからは、19年まで代表で指揮を執った中北浩仁氏が監督に復帰。また、フランスと日本のアイスホッケーのプロチームでプレーした宮崎遼氏がアシスタントコーチに就任し、これまでの強化を引き継ぎながら、新体制で世界に通用するチームづくりに取り組んでいる。

伊藤樹(ロスパーダ関西)や鵜飼祥生(東海アイスアークス)、森崎天夢(北海道ベアーズ)といった10代の選手も成長を続けており、中北監督は、「若い世代を育て切ること。これが(首脳陣が変わった)トランジションのなかで大事な作業のひとつ」と言い切る。

Aプールを戦うのは8カ国。その競技レベルは非常に高く、とくに2トップのアメリカとカナダは別格だ。追随するライバルチームも彼らに引き上げられるようにパワーアップをしている。そのなかで日本代表が6位以上を死守するには格上に勝つ必要があり、強化合宿では本番を想定した練習に臨んでいる。2月中旬に実施された合宿では、1対1で負けないアングルのかけ方や、相手のフォーメーションを崩し、壁際に追いやるプレッシャーのかけ方などに取り組んだ。

伊藤に声をかける宮崎コーチ(右)

戦術の理解不足や想像力に欠けるプレーには、中北監督からゲキが飛び、選手たちが気合を入れ直すシーンもあった。宮崎コーチは監督と選手の緩衝材的な役割を担いつつ、選手に声をかけ、またボーデン氏はゲーム形式の練習では実際にスレッジに乗り、華麗かつスピーディーなスケーティングやハンドリングの“手本”を見せながら選手に対峙していた。

宮崎コーチは、「ブラッドリーがスレッジスキルやスティックの使い方といった、ネットで調べても出てこない技術やポイントを惜しみなく教えてくれる環境がある。選手はもっと貪欲に吸収してほしい」と話す。

3月には北海道・苫小牧で長期合宿を計画している日本代表。実は、ここにパラリンピック金メダルチームのアメリカから現役の代表選手が多数所属するクラブチームを招き、ともに練習し、彼らのドリルから強化を図る予定だという。コロナ禍によって海外勢との交流や試合機会の多くを失った日本代表にとっては、世界選手権に向けて“最強の戦士たち”との実戦から学び、試合勘を養う絶好の機会となる。Aプールに向けてどこまでチームを上げていくことができるか、注目したい。

(取材・文・撮影/荒木美晴)