現地時間14日午後8時半から、日本対韓国の試合が行われた。メダル獲得には、予選リーグ上位2チームに入ることが絶対条件。大きなプレッシャーがかかるなか、日本は序盤から圧倒的にパックを支配し、韓国ゴールを攻め立てた。第1ピリオドの4分46秒に、左サイドから遠藤隆行(DF)と須藤悟(DF)がつないだパスを、エース・上原大祐(FW)が鮮やかに決め、先制点を挙げた。この得点で勢いづいた日本は、トータル5点を奪取。韓国に完封勝利して2勝とし、予選リーグ2位以上が確定。最後のアメリカ戦を残して、決勝リーグ進出を決めた。
「日本は強い」
素直にそう思わせてくれる、最高の試合内容だった。序盤に韓国に攻め込まれる場面があったものの、上原の先制点をきっかけに流れを完全につかんでいた。ランキング的には格下の相手とはいえ、成長著しいチームだけに、一切の妥協はしなかった。戦術としては、初戦のチェコ戦と同じように、中にパックを放り込んで走るというスタイル。スピードとチームワークに勝る日本は、攻守でナイスプレーを連発。練習を重ねてきたフォアチェックも機能し、韓国の攻撃の芽を見事なまでにつぶした。
得点した5点は、強化トレーニングの賜物だ。2点目は、左サイドから遠藤、石田直彦(DF)とつないだ矢のようなパスを、ゴール前に詰めていた吉川守(FW)がバックハンドでワンタッチのシュートを決めた。3点目は、リンクのほぼ中央で混戦からこぼれたパックを拾った遠藤が、スピードに乗ってあっという間にゴール前へ。相手ディフェンスにマークされていたが、それをものともせず右手で強烈なシュートを放った。4点目は日本のパワープレーが解ける3秒前に、吉川が再びゴール。決勝点となった5点目は、司令塔の高橋和廣(FW)がパックをキープしながらゴール裏から回り込み、キーパー横にねじ込んだ。
セットプレーから、また速攻からの鮮やかなゴールシーンは、会場を沸かせた。試合が終了し、歓喜に沸く日本代表チーム。試合終了が夜11時近くと遅かったにもかかわらず、会場に駆けつけ、最後まで声援を送ってくれた観客に向かって、しばらくの間手を振っていた。
4強入りを決め、素直に喜ぶ選手たち
試合後、遠藤は、「上原のゴールが空気を変えた。1ピリで3-0だったけど、ここで失点したら(気持ちが)落ちてしまうので、キャプテンの自分がもっと声を出さなきゃ、と思っていました。それにみんなよくついてきてくれた」と、笑顔と涙が入り混じった表情で話した。
また、2得点2アシストと活躍した吉川は、「課題だったゴール前を厚くする攻めが出来たし、周りもよく見えていました」と勝因を分析した。
パラリンピック4大会連続出場の守護神・永瀬充は、はじめて4強に残り、「やったよ〜!はじめてここに来たよ!」と満面の笑顔。前日のチェコ戦で、自身のミスから失点したことに触れ、「序盤に韓国に攻めあがられたとき、ここで点を許すと流れが韓国に行ってしまうから、止められてよかった。イッシー(石田)、ヨッシー(吉川)のコンビの2点目は、“ビューティフル・ゴール”!」と興奮気味に話したが、トリノ後は一度引退を決意していただけに、感無量のようす。最後は、「やっぱり決勝に行って、金メダルをとりたい」と涙を浮かべた。
最後に、大勢の報道陣に囲まれた中北監督は、「今日の試合は、監督の采配や戦略うんぬんではなく、選手自身のハートで掴み取った勝利です」と会心の笑顔。「完封勝ちにこだわり、強い日本をPRできた。これは決勝リーグにあがる、ほかの3カ国への、強いメッセージになったと思います。本当によくやってくれた。次のアメリカ戦にも必ず勝ちます」と話した。
予選最終戦のアメリカ戦は、現地時間16日の午後5時から行われる。
◆第四試合スコア
日本 3-0-2=5
韓国 0-0-0=0
(①G上原、A遠藤・須藤/②G吉川、A高橋・石田/③G遠藤、A吉川・上原/④G吉川、A上原・高橋/⑤G高橋、A吉川)
(取材・文/荒木美晴、撮影/吉村もと)