スイス・バーゼルで開幕した世界選手権には、26名の日本選手がエントリーしている。開幕初日の20日は、各クラスの予選リーグがスタート。下肢障害男子SL4の竹山隆人(アクサ生命保険)はイングランドの選手とのフルゲームに競り勝ち、貴重な白星を手にした。
第1ゲームを奪われてからの逆転勝ち。4人が争う予選B組は世界ランク2位のインドの選手が頭ひとつ抜けているが、竹山とポーランドの選手が同36位、この試合で対戦したイングランドの選手が同35位と、三つ巴の様相を呈している。決勝トーナメントに出場するためには、「絶対に落としてはいけない試合」に見事勝利した竹山は、「仲間たちの声援に背中を押してもらった」と、晴れやかな表情を見せた。
1957年9月生まれの61歳。世界選手権は「若い時に何度か出たかな」という、競技歴38年の超ベテランだ。昨年の日本選手権では準優勝、前回の世界選手権(韓国)では、ダブルスでベスト8の成績をおさめている。トップレベルを維持し続ける秘訣を聞くと、「バドミントンが好きで、若い人に負けたくないという気持ちがある。彼らが僕に力をくれているし、私を見て、若い人たちが奮起してメダルを一個でも多く獲ってくれたら」と笑顔で話していた。
下肢障害男子SL3の藤原大輔(ダイハツ工業)は、予選リーグ初戦でフランスの選手にストレート勝ち。リードしていた第2ゲームで追いつかれるも、「いろいろショットを試しながらやっていたので、点数の取り方は何となくわかっていた。ここで追いつかれたらこうしよう、というプランがあったので焦ることなくできた」と、試合を冷静にコントロールした。
SL3のシングルスは半面でプレーする。前後の動きが中心になるため、これまでは防御をプレーの軸に置いていたが、世界のレベルアップに対抗し、今年からオフェンシブなスタイルに切り替えた。「これまでラリーはできるけど相手にプレッシャーを与えられなくて負けていた。苦しい場面になっても我慢じゃなくて、攻めていくという形が、勝負所で出せれば」
5月のカナダ国際の試合中に捻挫した右足首も回復した。今大会は「強化してきたことを確認しながら、目の前の一戦を大事にして戦いたい」と話し、前を見据えた。
立位SL3-SU5ミックスダブルスの末永敏明(昭和電工)・杉野明子(ヤフー)組は、予選リーグでトルコのペアにストレート勝ち。杉野は左ひざの前十字靭帯切断から復帰して初めての大会となったが、長年ペアを組む末永と息の合ったコンビネーションで初戦を勝ち切った。杉野は「1勝してホッとしたけれど、まだ気を抜けない戦いが続くので気を引き締めていく」と話し、末永も「予選を1位抜けして、決勝トーナメントでメダルが獲れるよう頑張りたい」と力強く語った。
上肢障害女子SU5の世界ランク1位の鈴木亜弥子(七十七銀行)は、相手の中国選手のコートの奥深くを突く低く速い弾道のショットに苦戦したが、フルゲームを制した。同じく第1シードの車いすWH1-WH2女子ダブルスの山崎悠麻・里見紗李奈(ともにNTT都市開発)は快勝した。
(取材・文・撮影/荒木美晴)