「ヒューリック・ダイハツJAPANパラバドミントン国際大会2017」は8日、競技2日目を迎え、各種目の予選などが行われた。予選各グループの勝者による決勝トーナメントでは、立位のミックスダブルス(SL3-SU5)で、末永敏明(昭和電工/SL3)・杉野明子(ヤフー/SU5)組が準々決勝でフランスとデンマークのペアに勝利。また、車いすのミックスダブルス(WH1-WH2)で、長島理(LIXIL/WH1)・山崎悠麻(調布市役所/WH2)組が準々決勝に駒を進めた。9日はすべての種目で決勝トーナメントが実施される。
2020年東京パラリンピックの実施種目
東京パラリンピックから初採用となるパラバドミントン。障がいの程度にあわせて6つのクラスに分かれている。東京大会では、男子7、女子6、ミックス1の計14の種目が実施されることが決まっている。残念ながら、立位男子のダブルス、女子SL3クラス、女子低身長クラスが実施種目から外れた。該当するクラスの選手は「本当に残念」と一様に口にしながらも、気持ちを切り替え、今大会も全力プレーを見せている。
知ればもっとおもしろい! 立位男子ダブルス編
今大会、立位男子ではSL3-SL4、SU5、SS6のダブルスが実施されている。SL3-SL4では、広井拓(雪印メグミルク)・末永組(ともにSL3)が決勝トーナメントに進出。また、チーム最年長・60歳の竹山隆人(アクサ生命/SL4)、藤原大輔(LINE/SL3)がそれぞれ外国人選手とペアを組み、同じく9日に準々決勝に臨む。
上肢障がいのSU5は一般のバドミントンと変わらないスピードと迫力が人気だ。日本勢では、小原宏平(札幌市立澄川小学校)・正垣源(Tポイント・ジャパン)組、今井大湧(日体大)・浦哲雄(グリーンスタンプ)組が予選リーグを突破。順当にいけば、9日の準決勝で両ペアが激突する。
彼ら4人は全員SU5の選手だが、実はこのクラスのダブルスは下肢障がいのSL3やSL4の選手も出場が可能。予選で小原・正垣組が対戦したマレーシアのペアのうち、ひとりがSL4で、今井・浦組が対戦したタイのペアは、ふたりともSL4の選手だった。今井は「彼らは下半身があまり使えない分、SL4の選手はコンパクトな振りで強いショットを打ってくるし、SL3の選手はシングルスが半面コートで狭いのでボディ周りの処理やレシーブがうまかったりする。シングルスでは絶対に当たらない選手とダブルスの試合ができるのはおもしろい」と、見どころを教えてくれた。
また、11月の世界選手権や来年のアジアパラ競技大会などの国際大会では、この立位男子ダブルスは実施される見通しで、彼らの視線はすでに前を向いている。「ダブルスが得意」と話す小原は、「2024年のパラリンピックは追加種目で実施される可能性もありますし、そうした国際大会で結果を出し、しっかり盛り上げたい」と力強く話した。
知ればもっとおもしろい! 立位女子SL3編
膝上での切断など、立位クラスのなかでは最も障がいが重いSL3。今大会、日本からは山田麻美(LAVA International)と伊藤則子(中日新聞社)がエントリーしている。2020年のパラリンピックではクラス自体が排除されたため、東京を目指す場合、可能性があるのは女子ダブルスかミックスダブルスとなる。山田は「シングルスの動きはダブルスでも無駄にならないと思うので、これから専念していこうと思います」と語る。
なお、今大会の女子シングルスでは、伊藤が唯一、準決勝進出を決めた。伊藤は1勝1敗で迎えた予選リーグ最終戦で、インドの選手と対戦。第1ゲームを奪われるが、そこから挽回。ファイナルゲームではコートの深い位置にショットを集め、相手の動きを封じた。終盤に逆転を許して先にマッチポイントを握られるが、鋭いカットで同点に追いつくと、その勢いをキープし白星を掴んだ。試合中は、熱戦を見守っていた仲間たちからも大きな声援が飛んでいた。「みんなの声が嬉しかった。最後まで集中力が切れなかった」と、価値ある勝利に涙をぬぐった。
伊藤によると、女子のSL3は世界的に見ても人数が少なく、国際大会でも総当たりで順位を決めることが多いという。今大会は7人が参加したため、2つのグループで予選を実施した。準決勝では世界ランキング1位のインドの選手と対戦することになり、伊藤は「集中して自分のやれるプレーをすべて出し、立ち向かっていきたい」と話している。
(取材・文・撮影/荒木美晴)