パラパワーリフティング — 2021/1/30 土曜日 at 21:41:42

【全日本/DAY1】男子59㎏級で光瀬が日本新記録樹立!

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混戦の男子59㎏級で日本新記録を樹立し、優勝した光瀬智洋=千代田区立スポーツセンター(写真提供:日本パラ・パワーリフティング連盟/撮影:西岡浩記)

「第21回全日本パラ・パワーリフティング国際招待選手権大会」が30日、東京・千代田区立スポーツセンターで開幕した。新人からベテランまで幅広い層が参加。コロナウイルス感染対策のため無観客で行われ、海外の選手の参加は見送られた。IPC公認大会で、東京パラリンピック出場を目指す選手にとっては、派遣標準記録(MQS)を突破する国内最後のチャンスとなる。

光瀬が特別試技で日本記録を更新

毎回混戦となる男子59㎏級は、光瀬智洋(シーズアスリート)が第2試技で137㎏の自己新をマーク。第3試技でライバルの戸田雄也(北海道庁)が持つ日本記録を1㎏上回る141㎏に挑戦して失敗したものの、直後の特別試技で見事に成功し、記録を一気に伸ばした。戸田の背中を追いかけ、力をつけてきたこの数年。だが、大会で優勝しても、日本記録は塗り替えられず、「戸田さんは超えないといけない壁だった」。

試技後に報道陣の質問に答える光瀬

昨秋のチャレンジカップ京都を制した後は、トレーニングで三頭筋や肩を鍛え、毎日シャフトを触った。その大会で好成績をおさめた男子65㎏級の奥山一輝(サイデン化学)にならい、バーベルを握る手幅を狭くするといった変化にも挑戦した。3月のワールドカップなど重要な大会が控えるが、「そこでも一番のライバルは戸田選手。加えて、今回の自分をどこまで超えられるか。パラランキングを上げていきたい」と話し、決意を新たにしていた。

一方、本来の力が発揮できず、131㎏に留まった戸田は、「(ケガをしたチャレンジカップ京都の影響を)正直、引きずっていたし、光瀬選手が伸びてきて焦りはあったと思う。でも、彼が力をつけてきているから僕も頑張れる。次の試合に向けて、必ず修正していく」と話し、前を向いた。

男子49㎏級は、リオパラリンピック同54㎏級日本代表の西崎哲男(乃村工藝社)とケガから復帰した三浦浩(東京ビッグサイト)の争いに注目が集まった。第1試技の132㎏に失敗し、三浦を追いかける展開となった西崎は、第3試技で136㎏に成功し、三浦を逆転して優勝した。「反省点ばかり。でも、リモートでも応援してくれている人たちのことを考えて、切り替えができた。もっと試技の精度を上げて、安定感ある試合をしていきたい」と語った。

男子54㎏級は、市川満典(コロンビアスポーツウェアジャパン)が135㎏で制した。

山本恵理が病気乗り越え復帰「可能性を感じる試合になった」

病気を経て復帰戦に臨んだ山本は、「試合ができることに感謝して臨んだ」と話す(写真提供:日本パラ・パワーリフティング連盟/撮影:西岡浩記)

女子の山本恵理(日本財団パラリンピックサポートセンター)は61㎏級に出場し、2位だった。昨年8月に亜急性甲状腺炎を発症し、約2カ月間練習ができなかった。現在は回復に向かっているものの、「病気と共生している」状況だといい、治療でステロイドを服用しているため体重のコントロールが難しく、本来の55㎏級ではなく階級を上げて臨んだ。第1試技で60㎏に成功すると、大きなガッツポーズを作った山本。試技後、「満足はしていないけれど、可能性を感じている。一時期は50㎏も挙がらず、私はもう無理なんじゃないかという気持ちも浮かんだけれど、それが払しょくされた」と力強く話した。この階級は、龍川崇子(EYジャパン)が65㎏で優勝した。

女子41㎏級ですでにMQSを突破している成毛美和(APRESIA Systems)は、昨秋のチャレンジカップ京都に続いて45㎏級にエントリー。第1試技で失敗し、第2試技で56㎏に成功した。しかし、この階級のMQSである60㎏には届かず、「緊張感を力に変えて必ず1本目は挙げなくてはいけないのに失敗してしまった。次のワールドカップや東京パラリンピックは45㎏級で狙っていきたかったけれど、今のままではどうにもならない。コーチらと相談してやっていけたら」と悔しさを浮かべつつ、前を向いた。

女子67㎏級の森﨑可林(立命館守山高)は、第3試技で66㎏をマーク。自己ベストには1㎏届かなかったが、安定感ある試技を見せた。森﨑は昨秋のチャレンジカップ京都で3試技とも失敗して失格という悔しさを味わっていた。「正直に言うと、少し前まで試合が怖いという気持ちが芽生えていた。でも昨日からワクワクしてきて、楽しみになってきた。(コロナ禍の)この時期に試合ができることに感謝しつつ、自分が楽しむためにこの競技をやっているという初心を心に持って臨むことで、記録を残すことができた」と笑顔を見せた。

女子41㎏級は自己ベストの47㎏をマークした佐竹三和子が、同55㎏級は中村光(日本BS放送)が制した。

(取材・文/荒木美晴、撮影/佐山 篤)