ウィルチェアーラグビー — 2009/12/20 日曜日 at 21:26:55

BLITZが日本選手権で前人未到の5連覇を達成!

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激しい攻防でボールをキープするBLITZの島川慎一/写真:吉村もと

ウィルチェアーラグビーの国内最高峰の大会である第11回日本選手権大会が、12月18日から3日間の日程で千葉ポートアリーナで開催された。東日本と西日本のそれぞれ予選を勝ち抜いた全国屈指の8チームが出場し、1点を争う熾烈な争いを展開。決勝では、アメリカの強豪チームでも活躍する島川慎一(3.0)が攻守の軸となったBLITZ(東京)が昨年3位のOkinawa Hurricanes(沖縄)を60-47で退け、大会5連覇を成し遂げた。

ウィルチェアーラグビーは、四肢麻痺者などを対象にした室内で行う4人制の車椅子ラグビー。選手は障害のレベルによって、持ち点が0.5点から3.5点まで7クラスに分類され、コート上の4人の合計が8.0点以下と決められている。

前方へのパスや車椅子同士のタックルが認められているのが特徴で、車椅子同士が激しくぶつかり合う様子は、思わず肩をすくめてしまうほどの迫力だ。

このコンタクトスポーツの迫力と、持ち点制度のうえに成り立つチームスポーツの面白さから、海外では広く知られ、人気競技となっている。

国内においては、近年、選手層の拡大を目指して新しくチームを作る動きも増えており、今大会は今年結成したばかりのBLAST(埼玉)が予選を勝ち抜き、初出場を果たした。

BLITZが王者である所以

「打倒・BLITZ」

大会4連覇中のBLITZを倒して、歴史を塗り替える。それが各チームの合言葉だったに違いない。だがその挑戦を、王者は圧倒的な強さで跳ねのけた。

決勝までの4試合は、いずれも20点近い差をつけての勝利。決勝こそ、西日本のチャンピオンであるOkinawa Hurricanesにディフェンスラインを突破されるなど、激しい攻防を強いられる場面もあったが、彼らに焦りの色は見られなかった。

「5連覇は当たり前と思われるかもしれないけれど、(王座を)守る強さを維持することは容易ではない。でも俺らには、それができる信頼関係がある」と、キャプテンの田村学(2.5)は胸をはる。

相手ディフェンスを吹き飛ばすパワー、緩急をつけたパス回し、見る者を惹きつけるカウンター。他のチームにはない、多彩で幅広い攻撃スタイルがBLITZの武器だ。注目が集まるのは、点を取れる島川らハイポインターだが、コートの上にいるほかの選手一人ひとりのやるべきことが明確で、そしてその役割を確実にこなしている。田村が言う信頼関係の上に成り立つ組織力と総合力の高さこそが、このチームの強さだといえるだろう。

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激戦を制し、笑顔で集合写真におさまるBLITZのメンバーとスタッフ

意外なことに、日ごろから猛練習を課しているわけではないという。最後に全員が集合して練習したのは、約2ヶ月前のこと。他チームと同じく、仕事などの都合でフルメンバーでの練習は難しいのが実情だ。それでも、王者らしく、1試合も落とすことなく最後まで戦いぬけたのは、「ベンチも、試合に出られない選手も含めて、全員で戦えるようになったから。この点は去年よりも大きく成長した点です」と田村。王者の王者たる理由がここにある。

3オーバータイムを制した北海道が3位!

HEAT(大阪)対 北海道BigDippers(北海道)のカードとなった3位決定戦は、息をのむ白熱した試合となった。序盤から、まさに点を取られては取り返す一進一退の攻防が続き、終盤になっても互いに譲らず、3分間のオーバータイムに突入。そこで試合が決まるかと思いきや、またも互角の争いに。さらに2回目でも決着はつかず、手に汗握る3回目のオーバータイムで、戦略的にボールをキープした北海道が残り時間1秒で得点し、劇的な勝利を挙げた。

北海道は第8回大会で7位、第10回大会で9位からの大躍進。その中心として活躍した池崎大輔(3.0R)は、「(今大会の)初戦でHEATに負けているんですが、それでも苦手意識を持たずに、“リベンジできるチャンス”だと強い気持ちで立ち向かえた。メンタル面の向上が勝因だと思います」と話し、はじめての表彰台を素直に喜んだ。

脊髄損傷のバスケットボールから転向した池崎は、車椅子バスケで培った抜群のスピードとチェアワークを誇る。そのスキルを活かした瞬発力は、今大会M.V.Pに選ばれた島川も認めるほどだ。

「次は、もちろん優勝を目指しますよ」

力強く前をまっすぐ見つめるその眼に、迷いはない。次のステージでの活躍が楽しみだ。

※カッコ内の数字は選手の持ち点

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攻守の柱としてチームを引っ張った北海道の池崎大輔(写真中央)

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佐藤佳人(写真左)を中心に結成した新チームBLASTは初出場ながら7位と大健闘

試合結果は以下の通り

優勝 BLITZ(東京)

2位 Okinawa Hurricanes(沖縄)

3位 北海道Big Dipperes(北海道)

4位 HEAT(大阪)

5位 AXE(埼玉)

6位 Genesis(埼玉)

7位 BLAST(埼玉)

8位 横濱義塾(神奈川)

<ベスト・プレイヤー>

0.5点 深澤康弘(横濱義塾)

1.0点 若山英史(横濱義塾)

1.5点 田湯隆之(北海道Big Dipperes)

2.0点 三阪洋行(HEAT)

2.0点 佐藤佳人(BLAST)

2.5点 佐々木操(横濱義塾)

3.0〜3.5点 池崎大輔(北海道Big Dipperes)、坂井泰司(BLITZ)

☆大会M.V.P 島川慎一(BLITZ)

☆大会M.S.P 仲里 進(Okinawa Hurricanes)

(原稿/荒木美晴 撮影/吉村もと)