水泳 — 2023/3/4 土曜日 at 21:50:38

山口尚秀が男子100m平泳ぎで世界記録更新!

by
男子100m平泳ぎ(SB14)で自身の世界記録を塗り替えるタイムをマークした山口=静岡県富士水泳場(撮影/植原義晴)

世界パラ水泳連盟公認の「2023日本パラ水泳春季チャレンジレース」が4日、静岡県富士水泳場で始まった。今大会は7月31日に開幕する「マンチェスター2023WPS世界選手権大会」の日本代表選手選考、10月の「杭州2022アジアパラ競技大会」の日本代表推薦候補の選考を兼ねており、すべてタイムレースで行われた。

東京パラリンピックの男子100m平泳ぎ(SB14)で金メダルを獲得した山口尚秀(四国ガス)は、この得意種目を1分2秒75で泳ぎ、自らの世界記録0秒99更新した。また、派遣基準記録を突破し、世界選手権出場の切符を手にした。山口はレースを振り返り、「合宿でビデオを見て細かい動作分析をした結果だと思う」と、フォームの改善が記録につながったと話した。

女子100m平泳ぎ(SB8)は、福田果音(KSGときわ曽根)が1分25秒55で制した。9月のジャパンパラ競技大会で出したアジア記録を塗り替える好パフォーマンスで、「自己ベストを更新できてうれしい。世界選手権では1分24秒台を出したい」と力強く語った。

パラ水泳のレースに初めて出場し、女子100m平泳ぎを日本記録で制した石原

また同レースの視覚障害クラスでもっとも軽いSB13は、健常の日本学生選手権や日本選手権でも活躍している石原愛依(神奈川大)が1分10秒09で泳ぎ、日本新記録を樹立した。4歳で水泳を始めた石原は、高校3年のときに世界ジュニア選手権の女子200m平泳ぎで銅メダルを獲得。神奈川大進学後もタイムを伸ばしたが、2021年の秋に視野が狭くなる病を発症。視力も低下し、光の調節も難しくなった。受け入れるのに時間を要し、1カ月ほど悩んで水泳を辞めることも考えたが、「やっぱり水泳が好き、みんなと一緒に練習したい、また戻りたいと思った」と続行を決意。さらに「少しでも可能性を広げられれば」と、健常者のレースと並行してパラ水泳にも挑戦することを決めた。

パラ水泳のレースに出場するのは今大会が初めて。「代表選考会などで何度も決勝を経験しているけれど、今日は本当に緊張して心臓が飛び出そうだった」と苦笑いを浮かべた石原。コースロープはほとんど見えず、会場の照明やプールの波の状況などによってターンでタッチする壁も見えないときもあるというが、その分磨きがかかった泳ぎの感覚でフォローし、自己ベストに迫るタイムで泳ぎきった。

国際大会に出場するためのクラス分けはこれから受けることになり、国際のステータスが認定されれば、一気にパラリンピックの金メダル候補となる。石原本人は「自己ベストを目指すだけ」と冷静にとらえており、「代表に選んでいただけたら、結果を残せるように努力したい」と落ち着いた口調で話し、前を向いた。

(取材・文/荒木美晴、撮影/植原義晴)