東京2020パラリンピックの日本代表推薦選手選考会を兼ねた「World Para Swimming公認2021ジャパンパラ水泳競技大会」第2日目が22日、横浜国際プールで行われた。鈴木孝幸(GOLDWIN)が初日の男子200m自由形(S4)に続き、男子150m個人メドレー(SM4)でも派遣基準記録を突破したが、他に突破者はなく新たな内定者は出なかった。
女子50mバタフライ(S7)は西田杏(三菱商事)が優勝。予選を37秒01で泳ぎ、自身が持つ日本記録を更新。派遣基準記録まであと0.47秒に迫った。
小学3年で水泳を始めた西田は、高校時代から日本代表として活躍。だが、2016年のリオパラリンピックの代表選考からは漏れ、翌年の1年間は強化指定選手から外れるなど悔しい想いも経験した。転機を迎えたのは19年2月。オーストラリアの大会でクラス分けの見直しがあり、西田はS8からひとつ障害が重いS7に変更になった。世界選手権やパラリンピックで実施されるバタフライはS8は100m、S7は50mと異なるため、西田は新たに自分の泳ぎを模索。翌3月の春季記録会で39秒台、同年のジャパンパラ競技大会で38秒台、今年3月の日本パラ水泳選手権で世界ランク6位相当の37秒台とタイムを縮め、そして今大会の自己ベスト更新へとつなげた。
西田の誕生日である9月3日は、パラリンピック本番の女子50mバタフライの実施日だ。運命ともいえるこの日に想いを馳せ、西田は「(もし代表に選ばれたら)観ている人たちの心を動かせるようなレースがしたい。日頃、自分を応援してくれる方々のために泳ぎたい」と言葉に力を込めた。
男子50mバタフライでは、高校1年の日向楓(宮前ドルフィン)が予選で35秒89をマークして自身が持つ日本記録を更新。そして決勝でも35秒78とさらに記録を塗り替えた。
生まれつき左肩から先がなく、右腕は10㎝ほどの両上肢欠損。腕で推進力を生むことができない分、柔軟でしなやかな上半身と両脚の強いキック力を武器に、理想とする「イルカのような滑らかな泳ぎ」でぐんぐんと前へ進む。一昨年に強化指定選手に選ばれてからは質の高い強化の成果もあり、大会に出場するたびに記録を縮める。派遣基準記録にはあと0.62秒届かなかったが、今回叩き出した35秒台は今季の世界ランクトップに躍り出る好タイムで、代表入りをアピールした。
(取材・文/荒木美晴、撮影/植原義晴)