
11月15日に開幕した、きこえない・きこえにくいアスリートによる「第25回夏季デフリンピック競技大会東京2025」は26日、東京体育館で閉会式が行われ、12日間の熱戦に幕を下ろした。
観客28万人が選手を後押し
100周年の記念大会で、日本で開かれるのは初。世界79の国・地域、難民チームから約3,000人のデフアスリートが参加し、日本選手団は全21競技に出場。金16、銀12、銅23の計51個の過去最多となるメダルを獲得した。
歓声や拍手は選手に伝わりづらいことから、目に見える応援方法「サインエール」が新たに考案された。期間中は各会場で無料観戦が可能で、目標の10万人を大きく超える延べ28万人の観客が訪れ、このサインエールや声援を送り続けた。デフスポーツやろう者の文化への理解を深めるコンテンツをはじめ、ユニバーサルコミュニケーション(UC)技術を体験できる企画など、様々なプログラムが用意された大会運営拠点の「デフリンピックスクエア」には、延べ5万人が訪問。また、全競技とも生配信され、会場に行けない人たちもデフアスリートの活躍を見届けた。
陸上・山田は2冠、水泳・茨は7種目で表彰台
競技初日から日本勢の大躍進が印象に残った今大会。柔道女子52㎏級の岸野文音が日本選手団“第1号”となる銅メダルを獲得。柔道では計7個のメダルを手にする活躍を見せた。また、競技3日目の19日には、陸上の山田真樹が混戦の男子400mで1位となり、日本勢の金メダル1号に。佐々木琢磨は男子100mで3位に入った。フィールド種目では、男子ハンマー投で遠山莉生が、男子円盤投で湯上剛輝が金メダルを獲得するなど、陸上では金5、銀3、銅3の計11個のメダルが誕生した。
5大会連続出場となる水泳の茨隆太郎は、20日の男子400m自由形で銀メダルを獲得したのを皮切りに、男子200m自由形、同200mと400mの個人メドレーの金メダルを含む計7種目で表彰台に立った。女子では、50m平泳ぎで久保南が銀メダルを獲得。また、初出場で17歳の串田咲歩が得意種目の平泳ぎ2種目と400mメドレーリレーで3位となり、夢の大舞台でその実力を発揮した。

バドミントンでは、女子ダブルスで矢ケ部紋可・矢ケ部真衣組が強敵の中国を破り優勝を果たした。男子ダブルスは永石泰寛・森本悠生組が銀メダル。空手では、男子個人形で20歳の大学生・森健司が優勝。個人組手の男子61㎏級でも銅メダルを手にした。女子団体形では、日本が息の合った演武を披露し、金メダルを獲得。また、開会式で日本選手団の旗手を務めた小倉涼が女子個人組手で2連覇を達成した。テコンドーでは、女子プムセで筑波技術大4年の星野萌が銅メダルを手にした。テニスの女子ダブルス決勝は日本勢対決となり、菰方里奈・鈴木梨子組が優勝、宮川百合亜・杉本千明組が準優勝となった。菰方は女子シングルスでも銅メダルを獲得した。
1周5キロのコースを20周し、計100キロで争う自転車の男子ロードレースでは、日本のエースである藤本六三志が最後のスプリント勝負を制して銅メダルを獲得した。日本勢初出場のレスリングでは、曽我部健が男子グレコローマンスタイル130㎏級で3位となった。ほかにハンドボール、射撃、テコンドー、ゴルフなどにも日本選手が初めて派遣され、熱戦を繰り広げて会場を盛り上げた。
団体競技・種目もメダルラッシュ

競技最終日には団体競技・種目の決勝戦が行われた。バスケットボール女子では、日本が世界ランキング1位の強豪・アメリカを65-64の1点差で破り、金メダルに輝いた。バレーボール女子は、準決勝で日本が強豪・ウクライナをフルセットの末に下し、決勝進出。決勝では前回女王のトルコに圧巻のストレート勝ちで、2大会ぶりの頂点奪還を成し遂げた。バドミントン混合団体決勝も日本が制して史上初の金メダルに輝いた。
卓球の女子団体は絶対王者の中国に敗れたものの、準優勝。男子団体は3位だった。サッカーは男女ともに日本が決勝へ進出。男子はトルコに1-2、女子はアメリカに0-4で敗れ、それぞれ準優勝となった。悲願の金メダルは逃したが、男女ともにデフリンピックでのメダル獲得は日本デフサッカー史上初の快挙となった。
全日本ろうあ連盟デフリンピック運営委員会の久松三二委員長は、「100周年にふさわしい素晴らしい大会だった。大成功だったと思う」と総括した。
(取材・文/荒木美晴、写真/植原義晴)













