
「天皇杯・皇后杯 第41回飯塚国際車いすテニス大会(Japan Open 2025)」が9日、いいづかスポーツ・リゾートテニスコートで開幕した。グランドスラムに次ぐスーパーシリーズに位置づけられるアジア最高峰の大会に、世界トップクラスのプレーヤーが集結した。男子、女子、クアードの各クラスで頂点を競う。大会は20日まで行われる。
初日は各クラスのシングルス1回戦を実施。注目したのは3肢以上に障害があるクアードクラスだ。クアード界はこの数年で変化のときを迎えている。たとえば、手指欠損ながら握力があったり、体幹が効いたりと、重度障害が多いなかでも比較的状態が良いとされる選手が増えた。近年は男子クラスから転向してくる選手も増加しており、それがクアード界全体の競技レベルを押し上げている。
そんななか、握力が少ないためラケットと手をテーピングで固定して戦う宇佐美慧(LINEヤフー)は、パリ2024大会で5位入賞を果たしたレアンドロ・ペニャ(ブラジル)に5-7、2-6で競り負けた。第1セットは丁寧な配球で主導権を握り、ゲームカウント5-3とリードした宇佐美だが、そこから相手の粘りのテニスにリズムを崩され、逆転を許した。宇佐美は試合を振り返り、「ペニャには6連敗中で、事前に映像で徹底分析して臨んだ。ファーストセットを取れば今まで見ていない景色が見えてくるかなと思ったけれど、徐々に体力が落ちてしまい、焦ってしまった。リードした場面でゲームを落としたのが響いた」と、悔しさをにじませた。
頚椎損傷の宇佐美はクアードクラスのなかでも障害が重いほうで、先手必勝がプレースタイルだ。一方のペニャのような腹筋が効く選手との対戦は試合が長引くほどフィジカルにもメンタルにも響いてくるが、「こういう選手とどう対峙するかが今のクアード界」と受け止め、「厳しい環境だからこそ、平常心を持ってプレーできるようにしていきたい」と話す。自身の大きなゴールのひとつに、来年のアジアパラ競技大会(愛知・名古屋)を掲げる。国別対抗戦のワールドチームカップでは日本代表に選ばれているが、「個人戦ではまだ日の丸をつけて戦ったことがない。代表に選ばれ、優勝を狙いたい」と力強く語り、前を向いた。
(取材・文・写真/荒木美晴)