パラアイスホッケーの4つのクラブチームが日本一を争う「2020年国内クラブ選手権大会」が12月5日~6日に開催された。試合はトーナメント方式で行われ、長野サンダーバーズが3連覇を達成。2位は東京アイスバーンズ、3位はロスパーダ関西、4位は東海アイスアークスだった。
大会後、ゲームスーパーバイザーを務めた日本代表の信田憲司監督は、「どのチームにも感動するようなプレーがあった。初めてクラブ選手権を見たが、今後が楽しみになった」と評価。4チームの活躍ぶりを振り返る。
優勝:長野サンダーバーズ
パラリンピック日本代表や強化指定選手がずらりと名を連ねる強豪チーム。1回戦の東海アイスアークス戦は12-0と快勝。何度かレシーブでパックをこぼす場面も見られたが、2日目のアップでハンドリングを修正。その結果、決勝では東京アイスバーンズ戦ではキルプレーから先制点を許すも、多彩なパスワークですぐさま取り返し、さらに得点を重ねて5-1で突き放すことに成功した。高い修正能力に裏打ちされた組織力で、「絶対王者」ぶりをいかんなく発揮した。司令塔・吉川守とスピードのある熊谷昌治との連携は見事。伸び盛りの新津和良や森マルコスらのさらなる成長にも期待がかかる。
信田GS「吉川のフェイスオフで主導権を握ったのが勝利のカギ。また、しっかりとブレードに行くパスを出し、クロスしながらパス交換をしていたシーンが多く感心した」
準優勝:東京アイスバーンズ
今大会は、チームの主軸である児玉直が手術明け、柴大明がケガのため不在。児玉の代わりに、成長著しい石川雄大がキャプテンマークをつけて臨んだ。アスリート発掘事業のJスタープロジェクト3期生5人を含む6人が新人選手で、ベテラン勢がきっちりとフォローしながら試合を展開。ゲームメークした元日本代表の上原大祐はスピードを活かした攻撃でフル回転の活躍を見せた。13歳のGK関谷譲はケガのため出場を見合わせたが、強化指定選手に選ばれており成長中。新人選手の進化、そしてフルメンバーがそろったとき、どんな化学反応を起こすチームになるか楽しみだ。
信田GS「石川は世界と戦えるレベルまで来ていると思う。関谷も中学生だけどセンスがいい。Jスターの選手たちも発展途上なので、今後のチームの可能性に期待したい」
3位:ロスパーダ関西
結成3年目、東海アイスアークス戦で11-0と悲願の初勝利を果たした。東京アイスバーンズ戦では伊藤樹のシュートで先制。その後、東京に逆転を許したが、GK大西航が21本のシュートを跳ね返すなど、1年間で大きな成長を見せた。キャプテン濱本雅也、次世代育成選手の松下真大はアグレッシブなプレーでチームを鼓舞。Jスタープロジェクト生でデビュー戦の小田島修と永井涼太は、仲間の気迫とアシストで東海戦でゴールを決めた。また、4チーム中、唯一の女子選手だった鈴木さくらはアイスホッケー経験者で、スピードこそないものの、絶妙なポジショニングでチームの勝利に貢献した。
信田GS「伊藤は点も取れるし、守りの感覚もある。代表合宿で小田島はパックの扱いに苦労していたが、この大会でしっかり修正できていた。ロスパーダも今後が楽しみ」
4位:東海アイスアークス
2019年結成と新しく、昨年はロスパーダ関西と連合チームで出場。今年はメンバーがそろい、単独出場を叶えた。平昌パラリンピック日本代表のレジェンド・福島忍が守護神としてゴールを守り、パラアイスホッケーでは有利とされる両足切断の那須智彦と森紀行がチームを引っ張った。那須と森は強化指定選手で、代表合宿で学んだことをチームに持ち帰り、練習に励んできた。今大会では得点できなかったが、課題が明確になったのは大きな収穫だろう。この経験を糧に、来年はスケールアップした姿を見せてくれるに違いない。チームの目標は、「東海アイスアークスから日本代表選手を輩出する」こと。
信田GS「コミュニケーションを取り何とか勝とうとしていた。成長のスピードは4チームのなかで一番高いと感じる。63歳のGK福島があれだけパックを止めるのは、同じGK出身として尊敬する」
(取材・文/荒木美晴、撮影/植原義晴)