陸上 — 2022/6/11 土曜日 at 21:17:10

道下が女子5000mでアジア新!

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女子5000m(T12)をアジア新記録で制した道下美里(左)とガイドランナーの川口恵=神戸総合運動公園ユニバー記念競技場(撮影/植原義晴)

「WPA公認 第33回日本パラ陸上競技選手権大会」が11日、神戸総合運動公園ユニバー記念競技場で開幕した。第1日目は2個のアジア新記録、11個の日本新記録、29個の大会新記録が誕生した。

東京パラリンピックのマラソン(T12)金メダリストの道下美里(三井住友海上)は女子5000m(T12)に出場し、18分31秒72で優勝した。自身が持つアジア記録を17秒以上更新した道下は、「練習の成果が出たと思う」と振り返った。

マラソンの女王がトラックでも結果を出した。選手とガイドランナーが握って走るテザー(伴走ロープ)はロード種目のマラソンより短くなり、腕の振り方も異なるため、「トラックは苦手意識があった」と道下。それでも、新たに取り入れた変化走でスピードを強化し、また継続して取り組むウエイトトレーニングの効果もあり、序盤から安定したリズムを刻んだ。道下は、「きつい中でも耐えて押し切る練習をしていたので、それがレースで出せるようになった」と語り、冬のマラソンにつながる成果に手ごたえを感じていた様子だった。

男子5000m(T11)は、終盤まで唐澤剣也(SUBARU)が引っ張り、ペースに変化をつけながら、ぴたりと後ろにつく和田伸也(長瀬産業)を警戒。しかし、ラスト2周で和田が逆転すると、唐澤は粘り切れず差をつけられて2位でフィニッシュとなった。一方、和田は「ムキになって抜こうとすると最後に体力が持たなくなるので無理はしなかった」と冷静に対応したことを明かし、15分14秒69の大会新記録につなげた。

和田のガイドランナーのひとりである長谷部匠さんは、2月に和田が所属する長瀬産業に就職。東京パラの男子1500mで銀メダルを獲得したことも評価された。出勤は週に1度で広報活動に従事し、それ以外は競技に専念できる環境だという。ガイドランナーがアスリート雇用のような形で採用されることは珍しいが、「東京パラで世界のレベルの高さを実感し、仕事をしながら伴走者としても活動していては世界で戦えないと感じた」といい、伴走と自身の競技力向上に打ち込める環境で力を養い、さらに飛躍することを誓っていた。

T45の三本木優也(右)は、両肩の可動域が狭い障害がある。男子100mは左上腕障害のT46の石田駆(トヨタ自動車)の隣で走り、接戦を演じた

男子100m(T45)は、先月のジャパンパラ競技大会で追い風参考の非公認ながらそれまでの世界記録を上回る10秒85で優勝した三本木優也(京都教育大)が出場し、11秒11だった。世界記録更新が目標だっただけに「狙っていた10秒7台とギャップが大きくて悔しい」と、無念さをにじませた。とはいえ、5月末の関西インカレでは10秒90をマークするなど、好タイムを連発しており、注目が高まっている。

2年後には今大会と同じ神戸ユニバー記念競技場で世界選手権が開かれる予定で、「実際にこの会場で走ってみて、(2年後は)ここで勝負するんだという見通しが立てられた」と三本木。世界選手権では表彰台に上がる目標を掲げており、「今季は10秒6台を出して、そこからコンスタントに記録を伸ばしていきたい」と力強く語った。

男子100m(T13)では、川上秀太(アスピカ)が11秒の壁を突破し、日本記録を上回る10秒73の好タイムで制した。高校時代に走高跳から短距離に転向したという弱視の川上はパラ陸上の経験が浅く、クラス分けが未判定のため、確定後に日本記録として認定される見込みだ。

(取材・文/荒木美晴、撮影/植原義晴)