
「WPA公認第36回日本パラ陸上競技選手権大会」が26日、愛媛県松山市のニンジニアスタジアムで開幕。初出場の選手から、昨年のパリ2024パラリンピック(以下、パリ2024大会)日本代表選手まで、約260人がエントリーした。今大会は、9月末からインド・ニューデリーで行われる世界選手権に向けた日本代表選考大会のひとつとして位置づけられている。
初日は2つのアジア新記録が誕生した。女子100m(T63 )では、兎澤朋美(富士通)が15秒55で走り、2021年に自身が打ち立てたアジア記録を更新。「シーズン初戦なので記録よりも無事に試合することを重視していたなかで、このタイムが出たことは良かった」と振り返った。また、女子砲丸投げ(F20)では、堀玲那(WORLD-AC)が2回目に12m81をマークし、こちらも自身が持つアジア記録を塗り替えた。

女子では、東京とパリの2大会連続でパラカヌー日本代表に選ばれた小松沙季(電通デジタル)がこの4月から陸上のやり投げ(F54)に競技転向。専属コーチはまだおらず、大会前に実際に練習でやりを投げたのは10回ほどだという小松。それでも肩の強さを活かして、1回目で14m66をマークし、会場を沸かせた。小松は学生時代はバレーボールに打ち込み、春高バレーにも出場。大学卒業後はVリーグチームでも活躍した。引退後に病気のため車いすとなり、パラカヌーで頭角を現した。パラカヌーの捻転動作はやり投げにも活きるといい、小松は「6月のジャパンパラで世界選手権の派遣基準記録(15m09)を狙いたい」と力強く語った。

男子走幅跳(T12)は、昨年の神戸世界パラ陸上で銀メダルを獲得し、パリ2024大会では5位入賞の石山大輝が1本目で6m79を跳び、優勝を果たした。今季初戦の1本目から大ジャンプを見せたが、「その後はやりたいことを試したら上手くいかなかった」と修正ができなかったことを明かし、「微妙な結果」と苦笑いを浮かべた。とはいえ、世界選手権の派遣基準記録はしっかりと突破。「パワーはまだ足りないと感じるが、インドで世界一を獲りにいきたい」と力強く語った。石山は松山市出身で、今回の会場も大会等で慣れ親しんだ場所だ。大会2日目に控える100mの自己ベストはこの会場で出したものだといい、「10秒台を出したい」と語った。
(取材・文/荒木美晴、写真/植原義晴)