「ヒューリック・ダイハツJAPANパラバドミントン国際大会2019」は17日、各クラス・種目の決勝が行われ、立位女子SU5の鈴木亜弥子(七十七銀行)がヤン・チュウシャ(中国)に21-19、22-20で勝利し、金メダルを獲得した。
鈴木がライバルに雪辱、大会3連覇達成!
このクラスでは、鈴木とヤンが互い以外に負けたことがない2強の対戦。序盤は丁寧な配球で主導権を握った鈴木。終盤に追い上げられ6連続失点を許すが、逃げ切った。ヤンもここからギアを上げ、第2ゲームは激しい攻防戦に。鈴木はヤンの強打をしぶとく拾い、16-19から一気に逆転。先にマッチポイントを握ったあと、一度はヤンに追いつかれるが、再び突き放すことに成功した。
今大会は自国開催の重要な大会だっただけに、とくに優勝への想いが強かったという鈴木。今年はトルコとドバイ、世界選手権、中国の大会で対戦し、鈴木が4連敗中だった。昨年はアジアパラでの決戦でも敗れ、最後に勝ったのは2017年の世界選手権。雪辱を誓うなかでの2年ぶりの勝利に、「有言実行ですね」と笑顔を見せた。
鈴木は伊藤則子(中日新聞社)と組んだ女子SL3-SU5ダブルスでも決勝に進出。中国ペアと対戦し、13-21、8-21で敗れた。日本は下肢障害の伊藤が前衛一カ所を守り、上肢障害の鈴木がL字でカバーするスタイル。準決勝まではきっちりと勝ち上がることができたが、決勝の相手は下肢障害SL4同士でローテーションで攻撃を組み立てる世界王者ペア。そのスピードにプレーを乱され、リズムを掴みきれなかった。
SL4藤野「パワーとフットワークを磨いてパラに出たい」
立位女子SL4決勝には、藤野遼(福岡大)が登場。チェン・フーファン(中国)と対戦し、11-21、12-21で敗れた。下肢障害のSL4は比較的障害が軽いクラスで、健常者と同じようなスピードやフットワークが求められる。藤野は脳性麻痺のため右手と右足に障害があり、右足では地面を強く蹴ることができないが、強化してきたフットワークを活かしてバック奥の厳しいショットも素早くシャトルの下に入り、粘り強くラウンドで返した。
一方、対戦相手のチェン(中国)は比較的動ける範囲が広く、体幹が強い。藤野は「パワーに押された。ラリーはできているけど、点数にはつなげられなかった」と唇をかんだ。
それでも、「フーファンと対戦すると、いつも自分の課題が見えてくる。彼女がいるから頑張ろう、強くなろうと思える。(一時、大会から離れたが)私にパラバドミントンを続けさせてくれた人。切磋琢磨して、頑張っていきたい」と話し、目標の東京パラ出場を見据え、前を向いた。
里見・山崎、大接戦を制した“いつも通り”のプレー
車いす女子WH1-WH2ダブルス決勝は、里見紗李奈・山崎悠麻(ともにNTT都市開発)がリウ ユートン・イン モンルー組(中国)に逆転勝ち(14-21、25-23、21-15)し、大会2連覇を果たした。中国ペアのショットへのタッチが速く、持ち味のローテーションを封じられた里見・山崎組は、ゲームカウント1-1で迎えた最終ゲームも先に相手に11点を取られてしまう。
だが、このインターバルで「いつも通りのプレーをしよう」といったん気持ちをリセットし、リズムを取り戻して4-14から13連続得点で逆転に成功。障害が重い里見が動かされスペースができても、山崎がすぐさまカバーに入ってショットを決める見事な連携プレーを見せ、一気に勝負をつけた。
勝利の瞬間、緊張から解放され涙が止まらない里見を、山崎が優しく抱きしめた。「紗李奈ちゃんに引っ張ってもらって勝てた試合」と山崎。里見もまた「後悔したくないよね、弱気になってないよねと確認しながら戦った。勝てたのは悠麻さんのおかげ」と話す。東京パラリンピック出場ランキング1位を突っ走る「ユマ・サリ」ペアは、これからも自分たちのプレーで世界と戦っていく。
(取材・文/荒木美晴、撮影/植原義晴)