競泳のジャパンパラ競技大会が21日から3日間の日程で横浜国際プールで行われた。15日までロンドンで開かれた世界選手権に出場した日本代表選手のほか、スペインや韓国など海外の注目選手も出場し、大会を盛り上げた。
世界選手権の男子100mバタフライ(S11)で金メダルを獲得し、東京2020パラリンピックの日本代表に内定した木村敬一(東京ガス)は、ライバルで同銀メダルの富田宇宙(日体大院)に競り勝ち優勝。山口尚秀(MG瀬戸内)は、同じく代表内定を決めた男子100m平泳ぎ(SB14)で1分5秒62の大会新記録をマークして制した。世界選手権は初出場ながら世界新記録を樹立して優勝した山口は、東京パラに向けて「自国開催の大会で、自分のパフォーマンスを発揮できるように、残りの時間をしっかり練習していきたい」と力強く語った。世界選手権の男子200m個人メドレー(SM14)で頂点に立った東海林大(三菱商事)は棄権した。
また、世界選手権で5個のメダルを獲得した鈴木孝幸(ゴールドウィン)は今大会、自由形(S4)2種目に出場し、安定したレース展開を見せた。
東京パラへ、それぞれの想い新たに
世界選手権での仲間の活躍に刺激を受け、パラリンピックへの想いを新たにしたスイマーも多い。
今春から社会人となり、新たな環境で練習に励む西田杏(三菱商事)は、初日の女子50mバタフライ(S7)予選で38秒65をマークし、日本新記録を樹立。決勝では少しタイムを落としたものの、1位に。出場を逃した世界選手権の決勝ラインのタイムを意識して泳いだため「力んでしまった」と反省を口にする西田は、「春から練習時間が増え、スピードに特化したトレーニングができている。東京パラで目指しているメイン種目。頑張りたい」と話し、前を向いた。
鎌田美希(立教大)も得意とする種目で結果を残した。女子100m背泳ぎ(S8)で、予選で自身が持つ日本記録を2秒以上更新すると、決勝ではその記録をさらに上回る1分31秒80で泳ぎ切った。「身体がブレないようにコツコツと体幹を鍛えてきた。今シーズンの目標である(東京パラ日本代表選考会を兼ねた来年の)3月の記録会に向けて、自己ベストをクリアできてほっとした」と笑顔を見せていた。
代表復帰を誓う一ノ瀬メイ(近畿大)は、女子200m個人メドレー(SM9)で優勝。100m背泳ぎは2位、100mバタフライは1分11秒20の日本新記録を樹立して2位となった。
江島大佑(シグマクシス)は、男子50mバタフライ(S7)でシンガポールの選手に次いで2位に入った。昨年のバタフライのルール変更に伴い、腹筋と背筋をこれまで以上に鍛え、片手でフラットに泳ぐフォームに取り組んできた。タイムは33秒12と自己ベストには届かなかったが、「昨年のアジアパラの予選より速いので、タイムとしては満足している」と充実した表情を見せた。
アテネ大会から3大会連続でパラリンピックの決勝に進んでいる江島だが、リオ大会は体調不良により直前に出場を辞退せざるを得なかった。それだけに、東京パラ出場への想いは強い。「バタフライに照準を絞っている」と話す33歳のベテランは、来春の記録会に向け、追い込んでいくつもりだ。
2018年のアジアパラ競技大会で7個のメダルを獲得した久保大樹(KBSクボタ)は、世界選手権出場を逃し、「なぜ自分がそこ(ロンドン)にいないのかと本当に悔しかった」と打ち明ける。モチベーション維持のために近畿大で練習するなどして自分に刺激を与えてきたといい、「今大会にかける気持ちは誰より強い」と久保。その言葉のとおり、初日の男子100m背泳ぎ(S9)で1分10秒24の日本新記録を樹立すると、3日目のメイン種目の100mバタフライでもスペイン人選手に次いで2位と結果を出した。「後半へばらなくなってきたのはこの夏の練習の成果」と話しており、より一層の成長を誓っていた。
男子の若手も力をつけてきている。日本身体障がい者水泳連盟の育成S指定の窪田幸太(日体大)は、男子100m背泳ぎと50m自由形(S8)で、いずれも予選・決勝とも日本記録をマークする力強い泳ぎを披露。100m自由形でも2位に入った。名門・日体大の水泳部で他の部員とともに練習に励み、とくに持久力の維持を意識してトレーニングしてきたといい、後半もスピードを落とすことなく泳ぎ切った。
また、伸び盛りの同育成A指定の南井瑛翔(比叡山高)は4種目中、3種目(S10)で優勝。男子100m自由形と100mバタフライは、予選で出した日本記録を決勝で塗り替える圧巻の泳ぎ。50m自由形も予選で日本記録を更新した。生まれつき左足首から下がない南井は、昨年もこの大会で50mと100m自由形で日本新記録をマークし、「パラリンピックは“夢”から“目標”に変わった」と話していた。その言葉を表すかのようにしっかりと実力をつけてきている南井。2024年のパリ大会を視野に入れる高校2年生の今後のさらなる飛躍に注目したい。
(取材・文/荒木美晴、撮影/植原義晴)