パリ2024パラリンピックの日本代表選考会を兼ねた「2024日本パラ水泳春季チャレンジレース」が9日、静岡県富士水泳場で開幕した。予選がない一発勝負のレースが行われ、宇津木美都(大阪体育大)と窪田幸太(NTTファイナンス)が東京2020パラリンピックに続き、代表に内定。東京パラ金メダリストの鈴木孝幸(GOLDWIN)も6大会連続でパラリンピック切符を掴んだ。
女子100m平泳ぎ(SB8)は、宇津木と福田果音(KSGときわ曽根)がデッドヒートを繰り広げる展開に。最後に宇津木がリードし、1分25秒23のアジア新記録を樹立。日本パラ水泳連盟が設定したパラリンピックの派遣基準記録Aを突破した。自己ベスト更新は7年前の中学3年以来という宇津木。「1月から調子が良く、自信があった。思い通りのレースができた」と手ごたえを語った。
大学3年の宇津木は、教員資格の取得を目指し、昨年11月には母校の小学校で1カ月にわたり教育実習に臨んだ。その間は練習時間が週に1~2回に減少したが、そこから今大会に向けて再調整し、知的の大会や健常者の大会に出場して仕上げてきた。これまでは新星の福田と切磋琢磨するなかで後塵を拝することが多かったが、「先輩として負けられない、今度こそという気持ち」で奮い立った。東京パラでは同種目で6位入賞を果たした宇津木。目標をアップデートし、「パリでは表彰台とタイムも狙いたい。記録も結果も満足いくものにしたい」と、力強く語った。
男子50m自由形(S4)は、鈴木孝幸(ゴールドウイン)が37秒86をマークし、アテネ大会から6大会連続でパラリンピック出場を決めた。
東京パラでは100m自由形の金メダルをはじめ、エントリーした5種目すべてでメダルを獲得する活躍を見せた鈴木。1月に37歳を迎えた今も気力・体力ともに進化しており、今回のレースも目標としていた37秒台の泳ぎを実現してみせた。「世界選手権でもアジアパラでも出せなかったタイム。そこを取り戻せたかな」と振り返り、パリに向けては「東京では叶わなかった有観客のなかで表彰台の真ん中に立ちたい」と、言葉に力を込めた。
窪田はメイン種目の男子100背泳ぎ(S8)一本に絞ってエントリー。退路を断ったレースに挑み、見事に1分7秒41で派遣基準記録Aを突破した。「失格しないようにと緊張した」なかで内定をつかみ取り、「ほっとしています」と笑顔を見せた。
東京パラでは5位。その直後から課題とする後半の持久力強化に取り組み急成長を遂げ、2023年8月の世界選手権は世界ランキング1位で迎え、銀メダルを獲得した。「東京パラは決勝に残ることが目標だったけれど、パリはメダル獲得が目標。気負わずやっていきたい」と話した。
大会は10日も行われる。
(取材・文/荒木美晴、撮影/植原義晴)