車いすテニス — 2023/2/24 金曜日 at 16:31:10

プロ選手が次世代選手に直接指導! 発起人の眞田は「車いすテニスの文化を根付かせたい」

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プロ車いすテニスプレーヤーと一流のトレーナーやコーチ陣が参加者に直接指導した=立川ルーデンステニスクラブ

「第2回車いすテニススペシャルクリニック Byプロ車いすテニス選手実行委員会」が23日、立川ルーデンステニスクラブで開かれた。ジュニアを含めて次世代を担う若手選手に、世界で活躍するプロ車いすテニスプレーヤー、一流トレーナーやコーチが直接指導し、日本の車いすテニス界の強化と育成につなげることを目的として実施した。

クリニック参加者は全国から集まった11歳から25歳までの19人。講師は、発起人の眞田卓(凸版印刷)、上地結衣(三井住友銀行)、齋田悟司(シグマクシス)、荒井大輔(BNPパリバ)、船水梓緒里(三菱商事)、小田凱人(東海理化)ら第一線で活躍するプロ選手と、先月引退を発表した国枝慎吾(ユニクロ)さんが務め、約4時間にわたって汗を流した。

プログラムは、チェアワークメニューを中心としたフィットネストレーニングからスタート。そして、テニスレッスン、プロ選手とラリーができるヒッティングで構成され、休憩時間や待機時間には参加者が積極的に講師陣に声をかけ、レクチャーを受けたり、交流をはかったりしていた。

参加者にアドバイスを送る国枝氏

競技歴2年の寺田伊織さん(兵庫)は「実際に打ちあって、プロのすごさを感じた」、14歳の吉田有悠さん(千葉)は「国枝さんからチェアの使い方のイメージを教わった。フレンドリーに話してくれて人柄にも憧れる」、競技歴1年の15歳の岩本希心さん(神奈川)は「楽しかった。上地選手のように私もパラリンピックに出ていろんな選手と戦いたいと思った」、16歳の岩切一馬さん(神奈川)は「左利きなので小田選手に憧れる。追いつけるように頑張りたい」と、それぞれフレッシュな気持ちを語ってくれた。

発案者の眞田が中心となり、イベントのためにプロ車いすテニス選手実行委員会を結成。昨年の第1回は参加者14人、プロ選手5人で開催した。企画のきっかけについて、眞田は「僕が車いすテニスを始めたばかりの18年ほど前、TTC(吉田記念テニス研修センター)で行われたテニスキャンプに参加した際、世界で活躍していた齋田選手や国枝さんと一緒のメニューを受け、上達のヒントをもらった。彼らと同じ空気の中にいたことも大きなインパクトだった。その経験は自分がプロになる要素のひとつになり、もう一度そういうイベントを開きたいと思っていたので齋田選手や国枝さんに声緒をかけたら、ぜひやろうと言ってくれた」と振り返る。

そして、「プロの選手の予定を合わせるのは本当に大変」とスケジュール調整の苦労をにじませつつ、「来年も継続し、少しずつ大きなイベントにしていけたら」と、力強く語った。

<講師の声>

発起人の眞田は「来年も開催したい」と語る

■眞田プロ
「イベント参加をきっかけに、生涯、車いすテニスを通じて楽しんでもらいたい。そして、日本に車いすテニスの文化をより根付かせて、盛り上げてもらいたい。僕自身、参加者との交流を通して、純粋に車いすテニスを楽しめたし、元気をもらった」

■上地プロ
「昨年も参加した選手に『どんなことに気を付けているの?』と聞くと、明確な答えが返ってきた。テニスの上達はもちろん、自分の考えをはっきり話せるようになっていたのが嬉しかった。こうしたイベントに声をかけてもらったら積極的に参加したいし、関西エリアで開催したり、女子選手メインでやる機会を作ったりとか、いろんな可能性を探っていきたい」

■船水プロ
「ジュニアの選手と一緒にテニスをする機会がなかなかないので楽しかったし、こういう機会を増やしていきたいと思った。自分が教える立場になり、言語化して人に伝えることの重要さを学んだ」

■小田プロ
「講師側として呼んでいただいたけれど、参加者と年齢が近いので、教えるというよりも世界で戦う姿や球筋を感じ取ってもらえればと思っていた。自分の感覚を伝えたいのに、『こうやって』とか『スーッと』とか擬音語を結構使ってしまうので、もう少し言語化や話術を学ばないと、と思った。国枝さんが参加者にしていたアドバイスは、僕自身、聞く側として勉強になった」

■齋田プロ
「若い選手にとってすごくプラスになるイベントだと思う。参加者の強くなりたい、うまくなりたいという貪欲な気持ちに触れて、私自身も刺激を受けた」

■荒井プロ
「ジュニア世代の選手と密にコミュニケーションをとれるのはこういう場しかない。参加者にとっては貴重な経験になったと感じてもらえるイベントだと思う。自分が活躍することで上を目指す選手もいると思うので、もっと頑張ろうと思った」

■国枝さん
「現役中はすべてを伝えるのは難しかったけれど、引退して自分の経験や自分が持っているものを純粋に伝えたいと思うようになった。(引退して顔が優しくなったと周りから言われるように)参加者も聞きやすかったのか、自分から質問をしてきたりして、1年間の成長を感じた。海外のクリニックに参加したこともあるが、このイベントのほうが充実していると感じる。ウォーミングアップの仕方など、むしろこの経験を海外に持っていけるのではないかと思った」

(取材・文・撮影/荒木美晴)