車いすラグビー — 2025/2/10 月曜日 at 15:55:59

新体制で臨んだ車いすラグビー日本代表、ジャパンパラで強豪下し優勝!

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新チームで再始動した日本代表。強豪を下して、見事優勝を果たした=千葉ポートアリーナ(撮影/植原義晴)

「2025ジャパンパラ車いすラグビー競技大会」が6日から4日間にわたり、千葉ポートアリーナで開かれた。パリ2024パラリンピック競技大会で金メダルを獲得した世界ランキング1位の日本、同2位のオーストラリア、同4位のフランス、同5位のイギリスの4カ国が参加。2回戦総当たりの結果、日本とフランスが5勝1敗で決勝に進出。その決勝では、51-48で日本がフランスを下し、優勝を果たした。

敗戦からの修正力が光った日本代表

総当たり戦の1敗は、フランスとの再戦で喫したもの。相手のマンツーマンの守備に連携を封じられ、序盤に点差を広げられたことが響き、48-50で敗れた。その反省から、ミーティングでは各ラインナップの動きを再確認し、決勝に臨んだ日本。

まずは、橋本勝也(3.5)-池透暢(3.0)-乗松聖矢(1.5)-倉橋香衣(0.5F)のハイローラインでスタート。ハードなディフェンスでフランスのパスコースを絞り、相手のターンオーバーを誘発するなどして立ち上がりから主導権を握った。その後も、フランスのローポインターのボールを奪うなど高い集中力を維持して連続トライに成功。第1ピリオドの終盤にはバランスラインを投入。残り4.2秒でタイムアウトを取った日本は、インバウンダーの小川仁士(1.0)からボールを受けた池の精度の高いパスを、キーエリアでポジションを取っていた中町俊耶(2.0)が身体をそらしながらキャッチして後ろ向きにトライ。第1ピリオドで4点差をつけた。

第2ピリオド以降もフランスに流れを渡さない日本。後半もディフェンスをこじ開けようとする相手に対して、ローポインターの安藤夏輝(0.5)らが巧みな位置取りでキーエリアを守ってドリブルのバイオレーションを誘うなど、最後までプレッシャーをかけ続けて勝利を掴んだ。試合後、中谷英樹HCは「いろいろなラインナップを試して優勝できたことは満足。初戦を良い内容で勝ち、自信を持ってプレーできたことが結果につながった」と、安どの表情を見せた。

新体制で臨んだ今大会

キャプテンのひとりを任され、攻守で存在感を見せた橋本

今大会、日本代表はパリ大会から約半数のメンバーを入れ替えるなど新体制で臨んだ。フル代表に初めて選出された19歳の青木颯志(2.5)ら若手選手も多く、また中谷HCはパリ大会までアナリストとしてチームを支えた経験を活かして初めて指揮を執った。さらに、橋本と乗松がダブルキャプテンを務め、チームをけん引した。

「いつか代表のキャプテンをやりたいと思っていた」と話す22歳の橋本は、「自分のプレーだけではなく、周りの選手の感情やチーム状況などを客観的に把握することが大事だと乗松選手と話していた。ベンチに下がった時に他の選手がネガティブになっているなと感じたら声をかけたり、自分たちが苦しい状況や疲れがたまるとコミュニケーションが減ってくるので盛り上げたり。すごく貴重な経験をさせてもらって自分の視野が広がったと思うし、これから新しい日本チームの色を生み出せたら」と語った。

1月から新ルール導入

ワールドウィルチェアーラグビー(WWR)は、2025年1月1日から車いすラグビーの一部ルール改正を実施( 1年間を試験実施期間)。日本国内では今大会から改正ルールが採用された。

<5つの主な改正点>
①女子選手が入る場合はチームの持ち点に一人につき0.5点が加算 → 細分化され、さらに2.0~3.5点の女子選手が入る場合は一人につき1.0が加算
②ファウルを犯した選手に科せられるペナルティが60秒 → 30秒に短縮
③インバウンドやドリブル、キーエリアにオフェンスが留まれる時間は10秒 → 8秒に短縮
④コート上のオフェンスチームの選手は30秒タイムアウトを4回取ることができ、監督はボールデッドのタイミングで60秒タイムアウトを2回取ることができる → 選手タイムアウトを取ることはできない、監督はボールデッドのタイミングで60秒タイムアウトを前後半それぞれ3回取ることができる
⑤タイムアウト後のスローインはボールがあった場所に最も近いペナルティ側のサイドラインからスタートする → ゲームクロックが1分を切った後のタイムアウト後のスローインはフロントコートからの再開を要求でき、その場合はトライラインに最も近いペナルティボックス横からのスローインとなる

正確なパスが持ち味の中町。新ルール採用でさらに活躍の場面が増えそうだ

中谷HCはこの新ルールについて「他国も同じ条件」と前置きしたうえで、「たとえばドリブルが10秒から8秒になる点については、日本はディフェンスが得意なのでこの2秒でターンオーバーが起きやすくなると思う」と話す。また、インバウンダーや速攻の場面でロングパスが出せる中町は、「2.0で長い距離のパスが出せる選手は新ルールでは重宝されるはず。レンジを伸ばしていきたい」と話し、前向きに捉えていた。

<最終順位>
優勝 日本
2位 フランス
3位 イギリス
4位 オーストラリア

(取材・文/荒木美晴、写真/植原義晴)