パラアイスホッケー — 2025/11/7 金曜日 at 5:07:45

【最終予選】日本が難敵スロバキアを下す! パラへ望みつなぐ劇的勝利

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パックをドリブルして持ち上がり、GKとの1対1を制して先制点を決めた鵜飼=ノルウェー・イェスハイム

パラアイスホッケーのミラノ・コルティナ2026冬季パラリンピックの出場権をかけた最終予選は6日、競技2日目を迎え、日本は強敵スロバキアを3-2で下し、1勝1敗とした。

第1ピリオドは両チームともに無得点。膠着状態が続くなか、先に先制点を挙げたのは日本だった。第2ピリオドの残り3分、日本は19歳の鵜飼祥生(FW)がスロバキアのパスが流れかけたところを背後から奪い、一気にゴール前に持ち込むと、GKとの1対1の対峙の場面で冷静に右腕を振り抜き得点を決めた。

ところが、第3ピリオドに試合が大きく動く。追い込まれたスロバキアが意地を見せ、3分半で同点に追いつくと、日本にプレッシャーをかけ続けて残り4分半で逆転ゴールを決めた。必死のディフェンスで追加点をしのぐ日本だが、刻々と時間が過ぎ重い空気が漂った。

劇的勝利をおさめ、感極まりながら君が代を口ずさむ日本代表メンバー

しかし、ここで20歳の若きエース・伊藤樹(FW)が存在感を見せる。フェンス際でバックをキープしたキャプテン熊谷昌治(FW)のパスに反応した伊藤は左手でパックをコントロールして前進し、最後は右のバックハンドでゴールに押し込んだ。この同点弾を機に勢いを取り戻した日本は、さらに猛攻をしかける。試合時間残り53秒には、熊谷が相手GKがはじいたパックを奪って右手で巻き込むようにシュートし、再逆転に成功した。日本は残り11秒で反則を取られて数的不利となるがこれを耐え、貴重な勝ち星を挙げた。

初日の韓国戦で敗れている日本は後がない状況だった。起死回生の同点弾を叩きこんだ伊藤は試合後、「ホッケーの神様が、まだ僕らにホッケーをしていいと言ってくれている」と目を潤ませて語ると、「日本が攻めるターンもあったけれど、相手にプレッシャーをかけられてしんどい時間も長かった。それでも、最後まで諦めずに、腕がちぎれてもいいと思いながら走った結果がこれ。まだ生き残っている。本当に嬉しい」と、声を弾ませた。

また、先制点を挙げた鵜飼は、「2カ月前の世界選手権では緊張してあまりパックに触れなかったけれど、それがいい経験になってここに来ている。高校生でパラアイスホッケーを始めて、いろんな人に支えてもらって、今の自分がある。パラリンピックに出場して、その人たちに恩返しをするという目標を立てて今回挑んでいるので、明日もしっかりと勝って、いい形で残りの試合につなげたい」と言葉に力を込めた。7日は、日本はカザフスタンと対戦する。

■今回がパラへのラストチャンス、6チームが「2枠」を争う

ミラノパラの出場枠は「8」。世界選手権Aプールの上位5チームがすでに出場権を獲得。イタリアも開催国枠を得ているため、残り「2」枠をこの最終予選で争う。今大会はAプールの下位3チーム(スロバキア、韓国、ノルウェー)と同Bプールの上位3チーム(日本、スウェーデン、カザフスタン ※1位はパラリンピック開催国のイタリアで今大会は不出場)の6チームが参加。総当たりで争われ、上位2チームが出場権を獲得する。

<6日の結果>

スロバキア 0-0-2=2(1勝1敗)
日本 0-1-2=3(1勝1敗)

韓国 2-0-2=4(2勝)
スウェーデン 1-0-1=2(2敗)

ノルウェー 1-1-2=4(2勝)
カザフスタン 0-1-0=1(2敗)

(取材・文・写真/荒木美晴)