トリノ(イタリア)で開催されているアイススレッジホッケーのソチパラリンピック最終予選は現地時間の26日、最終日を迎えた。前日の結果を受け、出場権を逃した日本代表はスウェーデンと対戦。3-4で敗れ、通算成績1勝4敗で大会を終えた。
日本3-4スウェーデン
ここまで1勝の日本。最終戦を何としても勝利で飾るべく、序盤から積極的にゴールを狙った。第1ピリオド、スウェーデンのエースKasperi, Per(FW #8)に先制点を許すが、7分27秒にパワープレーで上原大祐(FW)が決め、同点に。その後は1点を返されるが、第2ピリオドに再び日本のパワープレーのチャンスが訪れる。ここで日本はゴール裏から細かくパスをつなぎ、ゴール前に詰めていた須藤悟(DF)が鮮やかに同点弾を叩きこんだ。
徐々にスウェーデンに主導権を握られ2点を失い、2-4で迎えた最終ピリオドの6分。集中力を保ちながら相手陣地に攻め込む日本は、ベテランの吉川守(FW)がゴールのほぼ真横から手首のスナップを利かせた技ありシュートを決めて、1点差に。試合終了まで13秒になったところで、日本はタイムアウトをとる。そして、ゴールキーパーを上げて6人による総攻撃をしかけるが、残念ながら得点には至らなかった。
日本は5つの試合のうち、黒星の4試合はすべて1点差で敗れている。中北浩仁監督は「相手のミスを誘う戦いをしなければいけなかったのに、その1点はほとんどうちのミスで取られている」。追いつけそうで追いつけない「あと一歩」が、勝敗を分け、この成績となってしまった。2010年バンクーバーパラリンピック以降、世界のスレッジホッケーはフィジカル的にもハードになり、オフェンスのタフさが求められるようになった。30代後半から40代の選手が中心メンバーとして活躍する日本にとっては、厳しい状況になりつつある。成長途中の若手選手とうまく融合しながら、どのように工夫を重ねて強くなっていくかが今後の課題のひとつと言えるだろう。
■中北浩仁監督のコメント
「(バンクーバーからの)この3年半を振り返ると、中心選手を失ったりといろいろなことがあったにせよ、もう少しきっちりとした形に仕上げたかった。けれど、できなかったという反省が大きいです。(長野大会から続いてきた)パラリンピック出場ができないことに対して、私の責任が重いと思っています。アイススレッジホッケーという素晴らしいスポーツを残していくには、その受け皿をきっちりと作る必要があるので、そこは責任を持って対応していきたいと思います」。自身の進退については明言を避けた。
■選手のコメント
須藤悟キャプテン「スウェーデン戦は消化試合と言われるかもしれないが、良い入り方だったと思うし、良い試合展開だったと思います。負けたのは悔しいの一言だけど、最後に1点を返したのは意地を見せられたかな。良いチームだったと思います。これからは、チーム立て直しというよりは再建というか、まずは人集めから始めないと。チームの全員が思っているのは、(日本が長野パラから築き上げてきた)この競技の歴史を止めてしまうことは絶対できない、ということ。まずそこからだと思います」
熊谷昌治「僕はまだ(ホッケーを)3年半しかやっていませんが、自信を持って臨んだ大会だったので悔しさがこみ上げてきました。ファーストセットでプレーしたかったけれど、今大会はメンバーの調整があってセカンドセットになった。でもその中でもコミュニケーションを図って、ひとつのコマとして自分の働きをしてチームがつながっていけばいいと気持ちを切り替えました。これから、年齢的にも上に立っていかなければいけないし、今後はどうなるか分からないけれど、チームを引っ張っていける存在になれればと思います」
堀江航「残念ですが、これが実力です。個人的には(車椅子バスケットボールから転向して)ホッケーを始めて1年で、やるほどに楽しくなって、もっと上手くなりたいと思ったし、まさかこれほどホッケーにハマるとは思ってもいませんでした。日本代表ユニフォームを着て戦えるということは本当に誇りです。今大会に向けてはやるだけのことはやってきたつもりなので、そこは後悔がないですが、外国勢とやってみて、立ちあがりからシュートまでの展開を作っていくイマジネーションがまだまだ足りなかったなと感じています」
高橋和廣「拮抗した試合だからこそ、もっと踏ん張らなければ。そこが今後の日本のホッケー界がどうなるか、というところだと思います。個人的に今大会で得たものはただひとつ、悔しさだけ。次(2018年)のピョンチャンパラでその悔しさを返し、ダークホース的な日本を見てほしいです」
吉川守「ソチを見据えてこのイタリアに乗りこんできたんですが、いざ試合が始まると目の前のパックを奪う執着心という点で、甘さというか優しさが見えてしまったのかなという感じです。今日の試合は負けはしましたが、みんながクリーンにできてがむしゃらにやった結果が、こういう得点につながったのだと思います。(長野パラリンピックに出場したところから始まったアイススレッジホッケーは)たくさんの人に出会えて、この道を選んだ自分の人生は間違ってなかったなという思いです」
ドイツ8-3イギリス
ソチパラリンピック出場権を得られなかったドイツとイギリス。勝利でこのトーナメントを終えようと、両チームともに気合い十分で臨んだ。まず、先制点を挙げたのはイギリス。試合開始わずか25秒でKarlos Nicholson(FW #6)が決め、チームに勢いをつけた。だが、その後ドイツがパワープレーのチャンスで同点に追いついて落ち着きを取り戻すと、第2ピリオドには5点を追加し、流れはドイツに。イギリスは試合終了28秒前にドイツのゴール近くでのフェイスオフから1点を返すが、そのまま試合終了となった。イギリスは5戦全敗と苦しんだ。だが、昨年のロンドンパラリンピックでセーリングと陸上競技に出場した選手がチームに加わるなど、新しい風が吹いている。今後の成長が楽しみだ。
韓国3-2イタリア
決勝戦は最後までエキサイティングな展開となった。第1ピリオド、まずは韓国が先制点を挙げると、残り3秒でイタリアが同点に。第2ピリオドに韓国がパワープレーから得点して突き放すが、最終ピリオドには再びイタリアが追いつき、2-2で5分間の延長戦へ。ここでも決着がつかず、サッカーのPKのように一人ずつシュート合戦を行うゲームウイニングショット(シュートアウト)対決へ突入する。そして、1人ずつが失敗した4人目、イタリアのAndrea Chiarotti(FW #16)のシュートを韓国のキーパーが押さえ、逆に韓国のMin-Su Han(FW #68)が成功。この瞬間、韓国の勝利が決まり、両チームの熱戦に観客席からは大きなエールが送られた。
■26日の試合結果
第1試合
日本 1-1-1=3
スウェーデン 2-2-0=4
(日本得点 ①#32上原(PP)A#55高橋②#24須藤(PP)A#32上原③#13吉川)
第2試合
ドイツ 3-5-0=8
イギリス 2-0-1=3
第3試合
韓国 1-1-0-0-1=3
イタリア 1-1-0-0-0=2
■最終順位
1位 韓国
2位 イタリア
3位 スウェーデン
・・【ここまでがソチパラリンピック出場権獲得】・・
4位 ドイツ
5位 日本
6位 イギリス
(取材・文/荒木美晴、撮影/吉村もと)