現地時間の19日、午後7時から3位決定戦が行われた。カナダとノルウェーという強豪国同士の対戦。試合は、終始カナダが攻めの形を作るものの、ノルウェーが徹底したディフェンスでゴールを死守。最終ピリオドにカナダが先制点を挙げるが、その後ノルウェーがペナルティショットによる1点と、試合終了4秒前に決めたシュートによって大逆転。劇的な勝利をおさめた。
3位決定戦 ノルウェー 2-1 カナダ
第1、第2ピリオドは、カナダがほとんどの時間帯を相手陣地でプレーするなど、優勢にゲームをすすめた。ノルウェーにカウンターのチャンスを与えたときも、すぐさま2枚のディフェンスが戻って守るなど、そつのないチームプレーを発揮した。対するノルウェーは、その大きな体格を活かしてゴール前を徹底的にかためる作戦に。また、ゴールキーパーのRoger JOHANSENが高い集中力で鉄壁の守りを披露した。
カナダの勝利を信じて疑わない会場の観客は、最終ピリオドに入るなり、「Let’s go! CANADA」の大声援を送る。それに応えるかのように、ついにカナダが先制点を入れた。2分45秒、ノルウェーゴール前に攻め込むカナダは、左サイドからAdam DIXON(DF)が強烈なシュート。これが、シュートラインを左寄りに読んでいた相手ディフェンスとゴールキーパーの右横をすり抜け、ゴールネットを揺らした。
ひとつのプレーでノルウェーにPSのビッグチャンス
会場に渦巻く大声援が、大きなブーイングに変わったのは、6分が過ぎたころ。ノルウェーのシュートを抑えようとしたカナダのディフェンスDIXONと、ゴールキーパーのPaul ROSENが「フォーリング・オン・ザ・パック(故意にパックの上に伏せる)」の反則をとられ、ノルウェーにペナルティショット(ゴールキーパーとプレーヤーの1対1のシュート戦)を与えてしまう。
ノルウェーのシューターは、Rolf Einar PEDERSEN(FW)。「世界最高のプレーヤーのひとり」と言われながら、今大会は予選を含む4試合においてゴールは「0」と絶不調だ。だが、この絶対的なチャンスの場面で、PEDERSENはドリブルしながら、前に出てきたキーパーROSENをかわし、見事なシュートを叩き込んだ。輝きを取り戻すかのようなこの一発に、ノルウェー全体が息を吹き返したように見えた。
序盤の守りのスタイルが功を奏したのか、終盤まで体力が落ちないノルウェーは、ここから反撃を開始。そして、試合終了時間残り4秒にドラマが待っていた。カナダゴール前に攻め込み、Eskil HAGEN(DF)が右サイドから強烈なロングシュート。これが、HAGENをマークしていたディフェンスの身体に当たり、シュートコースを変えてゴールネットを揺らした。これが決勝点となり、ノルウェーが勝利。銅メダルを獲得した。カナダはまさかの4位に終わった。
ノルウェーは、今シーズン後半からNHLでもヘッドコーチとして実績があるカナダ人のジョージ・キングストン氏がチームをサポート。エースのHelge BJORNSTAD(FW)が予選の際に、「彼はこれまで知らなかったことを、僕らに教えてくれた」と話したように、ディフェンス力が向上するなどチームに新しい風が吹いていた。それでもバンクーバーでは、予選から調子が上がらず苦しんだが、最後にようやく笑顔を手に入れた。
◆第三試合スコア
ノルウェー 0-0-2=2
カナダ 0-0-1=1
◆銅メダルのノルウェーのコメント
Rolf Einar PEDERSEN(FW)「すごい。すごくうれしい。僕らにとって、この小国のノルウェーがカナダを負かしたことは、すごいことだよ」
Eskil HAGEN(DF)「(ウイニングショットを決めたことについて)何かに当たってきれいなアーチを描いてゴーリーの上を越えた。あんなふうに決まるなんて、特別だよ」
Rojer JOHANSEN(GK)「今日の僕らはディフェンスに焦点を絞った。今日は運命の女神が僕らのほうに微笑んでくれたね。(カナダを負かしたことについて)彼らのホームでのゲームに勝つなんて、絶対に不可能だと思っていた」
◆カナダチームのコメント
Adam DIXON(DF)「(負けたことについて)最悪だよ。僕らはプライドにかけて、おみやげ(メダル)を家に持ち帰るって決めてたのに。でも、僕は今大会のベストチームが僕らだと思ってる」
Jeff SNYDERヘッドコーチ「こういうことが起こりえるのがホッケーだよね。3ピリは十分にプレーできていなかった。1ピリと2ピリのほうがまだマシだった」
(取材・文/荒木美晴、撮影/吉村もと)