カナダ・カルガリーで先月27日から開催されていたアイススレッジホッケーの国際大会「World Sledge Hockey Challenge」が閉幕した。予選全敗の日本代表はセミファイナルでカナダと対戦。FW円尾智彦が代表初ゴールを挙げるなど新たな成長も見られたが、2-9で敗戦。三位決定戦ではノルウェーに3-5で逆転負けを喫し、大会を通して1勝をあげることができずに最下位に終わった。日本代表に帯同している青木栄広アシスタントコーチからの報告をもとに、レポートをお届けする。
三位決定戦、1ピリは2-0と日本がリード
三位決定戦の対戦相手であるノルウェーは、セミファイナルのアメリカ戦でFWトーマス・ヤコブセンが負傷したため、9人のプレーヤーで戦う苦しい布陣を強いられていた。
一方、日本代表はFW吉川守を1セット目に上げて、バンクーバーパラリンピックでも実績のあるセットでフェイスオフ。その起用がピタリとあたり、開始6分47秒、吉川からのパスにFW上原大祐が合わせて先制。その後も、第1ピリオド終了間際に、DF遠藤隆行の追加点で2-0と差を広げ、今大会初めて1ピリを勝ち越して折り返した。
疲労ピーク、2ピリで大逆転を許す
だが、ここからが日本の悪夢のはじまりだった。ここまで1ピリ20分を戦ってきた疲労がピークに。中北監督からは、「2ピリの開始10分をシャットアウトすれば勝てるぞ!!」と声をかけられたにも関わらず、2ピリ開始直後からノルウェーに押し込まれ、わずか5分間で同点に追いつかれてしまう。明らかに選手の動きは鈍く、レイ・マルタアドバイザーが、「あの時間帯、本当に君たち(選手)は戦う気力をもって臨んだのか!?」と言われるほどだった。
そして終盤、大会を通じて「一番気をつけろ」と注意されていた、ターンオーバーから相手の勝ち越しを許してしまった。ここで、キーパーを馬島誠からベテランの福島忍にスイッチするものの再び得点を奪われ、2-3で最終ピリオドへ。
その第3ピリオドでは、さらにノルウェーに追加点を許した後、FW高橋和廣のゴールで1点差に詰め寄る。なんとか同点に追いつきたい日本は、勝負をかけた6人攻撃を仕掛けるが、逆にパックを奪われ得点され、3-5で敗れた。この結果、3位ノルウェー、4位日本の順位が確定した。
遠い1勝、世界選手権までに守りの強化が必須
この大会を通じて言えることは、来年3月の世界選手権に向けてゴールキーパーを含めた守りの再整備をしなければならないということである。特に、現在の日本代表チームから、バンクーバーパラリンピック時の正ゴールキーパーであった永瀬充が抜けていることは非常につらい状況であるということを、この大会で改めて露呈してしまった。しかし、日本チームの攻撃の要である上原、高橋、吉川がそろって得点をし、順調に仕上がりつつあるということと、今大会で代表初得点を取った円尾や若手の塩谷(吉寛)らが、大会を通じて成長を見せたことなどは成果といえる。
チームとしては、来年1月に長野市のビッグハットで行われる国際大会『2012 JAPAN ICE SLEDGE HOCKEY CHAMPIONSHIPS』(カナダ・ノルウェー・韓国・日本の4カ国が参戦)を経て、今シーズン最大の目標である世界選手権(3月、ノルウェー)でのメダル獲得を目指し、もう一段階成長させていきたい。
中北浩仁日本代表監督コメント
「今シーズンから遠藤がチームに復帰し、遠藤、須藤、三澤のDF陣はよく守り戦ってくれたが、GKの出来が悪すぎた。この部分をきっちり修正すると共に、今大会で成長を見せてくれた選手をチームの戦術に取り入れ、もうワンステップ上の戦いが残りの2大会でできるようチームを成長させていく」
レイ・マルタ日本代表アドバイザーコメント
「すべてに試合において、日本チームが試合を完璧に支配している時間があった。あとは、この時間帯をどのように増やしていくかが課題。失点については、ターンオーバーやキルプレーなどのパターンが多かったので、同じパターンで失点しないように努力しなければならない」
遠藤隆行キャプテンコメント
「自身復帰後初の大会ではあったが、ある程度できるのでなないかと自信を持っていた。しかし、それは見事に打ち砕かれた。ただ、チームとしては、自分が一年間いなかった間にすごく成長した選手もいるので、自分がチームの中心となって、みんなと一緒にこの悔しさをバネにして成長していきたい」
●セミファイナルの結果●
<第2試合>
日本 1-1-0=2
カナダ 3-3-3=9
<第1試合>
ノルウェー 0-1-1=2
アメリカ 1-3-3=7
●三位決定戦の結果●
日本 2-0-1=3
ノルウェー 0-3-2=5
●決勝の結果●
アメリカ 1-0-0=1
カナダ 1-1-2=4
★最終順位★
優勝 カナダ
2位 アメリカ
3位 ノルウェー
4位 日本
※この記事は、青木栄広日本代表アシスタントコーチのレポートを元に作成しています
(編集/荒木美晴)