陸上 — 2019/6/3 月曜日 at 14:51:54

佐藤友祈が存在感、女子は兎澤、佐々木がアジア新!

by
天候が崩れるなか、男子400m(T52)を制した佐藤友祈の走り=ヤンマースタジアム長居(撮影/植原義晴)

「第30回日本パラ陸上競技選手権大会」は2日、大阪市のヤンマースタジアム長居で最終日を迎えた

男子400m(T52)は世界記録保持者・佐藤友祈(World-AC)が、伊藤智也(バイエル薬品)、上与那原寛和(SMBC日興証券)らベテラン勢を抑えて優勝。1500mはこのクラス唯一の出場者となり、3分46秒13をマークした。5月下旬のスイス遠征から帰国したばかりで、この日は雨が降っていたこともあり記録は伸びなかったが、「日本選手権で、(長居の)重いトラックで走ることが大事だと思うのでトライできてよかった」と話した。

佐藤の視線の先にあるのは、来年に迫った東京2020パラリンピックでの金メダルだ。初出場のリオ大会で獲得した2種目での銀メダルは、いずれもレイモンド・マーティン(アメリカ)に阻まれたもの。400mは0.46秒差、1500mは1秒以上の差をつけられた。その翌年の世界選手権では、佐藤が雪辱を晴らしているが、パラリンピックでの借りはパラリンピックでしか返せない。「マーティン選手にリオであの差をつけられたのが今でも悔しい。今度は僕が前に出てリベンジしたい。東京ではぶっちぎりで優勝したい」力強く語った。

100mと走幅跳に出場した兎澤。11月の世界選手権でも活躍が期待される20歳だ

女子100mでは兎澤朋美(義足などT63/日体大)が16秒69で優勝。4月の兵庫リレーカーニバルで自身が更新したアジア記録を、さらに0.04秒塗り替える快走を見せた。競技用義足の板バネの特性を生かしつつ、「健足もしっかり動かしてバランスのとれた走りを意識している」と話す兎澤。実は腰の状態が万全ではなかったというが、「その中でも今できることをやり切れた」と勝因を振り返った。また、女子400mでは佐々木真菜(視覚障がいT13/東邦銀行)が58秒34のアジア新記録を樹立した。

平昌パラリンピックのスノーボードの金メダリスト・成田緑夢(切断などT44/フリー)は男子走高跳のこのクラスでただ一人出場し、1m82をマーク。また、アルペンスキーの覇者・村岡桃佳(車いすT54/トヨタ自動車)は女子100mに出場し、2位だった。

男子走高跳のT47(片前腕切断など)は、17歳の足立悠都(福知山高)が日本新記録となる1m73を成功させ、優勝した。4本目の1m70は失敗が続き、3回目で辛くもクリア。コーチに「落ち着いていけ」と声をかけられ挑んだ5本目は、見事1回目の跳躍で完璧に成功させた。試合は前日本記録保持者の岡林正紀(奈良県)との一騎打ちで、「岡林さんに自分を引っ張り上げてもらった」と感謝する。男子100mは4位だった。

足立は「今日の結果を次の関東パラやジャパンパラにつなげた」と語った

高校では陸上部に所属し、走高跳と110mハードルが専門。今大会と日程が重なった高校最後の総体にもエントリーしており、最終日にひとり舞台をパラ陸上に移した足立の活躍を京都に残る仲間たちが応援してくれていたといい、「みんなと一緒に頑張るという気持ちで臨んだ」と笑顔を見せた。

5歳から始めた社交ダンスのキャリアは約10年。陸上を始めたのをきっかけにやめたものの、ダンスで培ったバランス能力は走高跳に活かされているという。左腕が短く、重さも左右差があるため、跳躍時は腕の振り上げの制御などが難しく、課題となっているが、「しっかりと左腕を意識し、記録を更新していきたい」と話し、前を見据えた。今後の成長が楽しみだ。

(取材・文/荒木美晴、撮影/植原義晴)