「WPA公認 第24回関東パラ陸上競技選手権大会」が6日、町田市立陸上競技場で開幕した。初日は3個のアジア記録、10個の日本記録が更新された。大会は7日まで行われる。
男子200m(T64/切断など)決勝は、井谷俊介(SMBC日興証券)が23秒80のアジア新記録をマーク。今年5月には100mで自身が持つアジア記録を更新しており、2種目のアジア記録保持となった。200mのレースは2月のドバイグランプリから出場するようになったばかりで、好記録にも「もう少し行けると思ったけど、後半失速してしまった。まだまだ体力がない」と反省を口にしていた。
車いすでは、最も障がいが軽いT54クラスの男子のレースに注目が集まった。男子5000mは序盤から4人が周回ごとに先頭を入れ替わり、レースを引っ張る展開に。残り1周となったところでスパートした樋口政幸(プーマジャパン)が、最後の直線でライバルを振り切り、1着でゴールした。また、男子800m決勝では鈴木朋樹(トヨタ自動車)が後続を突き放す快走を見せ、優勝を果たした。
女子T54の200m決勝は混戦の展開となり、8人中上位4人が大会記録を更新。終始、力強い走りを見せた中村嘉代(関東パラ陸協)が優勝し、後半に粘りを見せた安川祐里香(関東パラ陸協)が0.14秒差で2位に入った。「緊張してスタートがうまくいかなかったけれど、最後の100mは落ち着いていけた」と振り返った安川。メイン種目は100mと400m。世界を視野に入れ、「パワーと筋力、持久力がまだ足りないので、しっかりトレーニングを積んでいきたい」と話し、前を見据えていた。
同じく注目クラスの女子T52の200mは、木山由加(OLM Digital)がただひとりエントリー。最後まで自分のペースを維持して走り抜けた。
女子走幅跳(T12/視覚障害)は、澤田優蘭が5m06で優勝した。澤田は網膜色素変性症のため視界の中心はほぼ見えず、左右がぼんやり見える程度。踏切のラインは「見えたり見えなかったり」の状況のため、視界より助走の歩数「17歩」の感覚を信じて跳ぶ。今回の記録は自己ベストの5m70と開きがあるが、昨年からスピードを活かした助走や踏切を見直しているところで、「今は技術の習得に専念しているので記録は出づらい時期だから」と冷静だ。得意の100mとは別に、跳躍の練習は月に2~3回程度。幅跳と三段跳を専門とするコーチの指導を受けており、2種目で今年のドバイ世界選手権、そして東京2020パラリンピックに照準を合わせていく予定だ。
男子やり投(F12/視覚障害)の若生裕太(関東パラ陸協)は、2投目に大会新となる53m52をマーク。6月の日本選手権で日本記録を更新し、一気に注目を集めた22歳の新星。「今回は地元の大会で友人たちも観にきてくれたし、最高の準備をして臨んだ」が、自己ベストと11月の世界選手権の派遣標準記録に届かず、「悔しい」と唇をかむ。2週間後のジャパンパラで勝負をかける若生は、「次はミスショットをゼロに抑えて記録を取りに行く」と話し、前を向いた。
(取材・文/荒木美晴、撮影/植原義晴)