柔道 — 2017/11/28 火曜日 at 23:18:18

女子57㎏級は廣瀬順子が優勝、混戦の男子66㎏級は17歳瀬戸が決勝T進出の活躍

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圧倒的な強さで女子57㎏級を制した廣瀬順子(右)=講道館(撮影/佐山篤)

「第32回全日本視覚障害者柔道大会」が26日、講道館で行われた。今大会は、日本人選手に加えて、リオパラリンピックのメダリストら海外選手も参加。熱戦が展開された。

昨年のリオで銅メダルを獲得した57㎏級の廣瀬順子(伊藤忠丸紅鉄鋼)は、抜群の安定感を見せ優勝。最近は国際大会でパワーに勝る海外選手が台頭しており、「そんななかでどう自分の柔道をすればよいか、組手を研究してきた」と廣瀬。夫で男子90㎏級の廣瀬悠(伊藤忠丸紅鉄鋼)と昨年そろってパラリンピックに出場した。2年半後に迫った東京パラリンピックでは「夫婦でメダル獲得」を目標に掲げており、「もっと努力していきたい」と語った。

男子90㎏級で優勝したイギリスのELLIOT STEWART

今大会は海外勢が存在感を放った。イギリスは男子重量級に3選手を派遣。90㎏級決勝では、ELLIOT STEWARTが廣瀬悠を内股で破って優勝。100㎏級はCHRISTPHER SKELLEYが、また100㎏超級はJACK HODGSONが制した。3選手とも10月のワールドカップでそれぞれ表彰台に乗っており、実力の高さを見せつけた格好だ。試合後に囲み取材に応じたSTEWARTとHODGSONは、「柔道の聖地である講道館で試合ができて良かった。良い経験になった」と話していた。

注目の男子66㎏級は、12名の選手がエントリー。4つのリーグに分かれて予選を戦い、決勝トーナメントに進んだのは、リオの60㎏級銀メダリストの廣瀬誠(愛知県立名古屋盲学校)、リオのこの階級の銅メダリスト・藤本聰(徳島視覚支援学校)、今年の全国視覚障害者学生柔道大会を制した瀬戸勇次郎(福岡県立修猷館高)、10月のワールドカップのチャンピオン・YONGHO YOUN(韓国)の4名。そして決勝は、藤本とYOUNとのカードに。優勝の期待がかかる藤本だったが、終盤に背負い投げで一本負け。この階級も海外選手の勢いが印象に残った。

そんななか、若い日本人選手の台頭もみることができた。予選を勝ち上がった高校3年・17歳の瀬戸は、準決勝で藤本に一本背負いで敗れたものの、先輩柔道家たちとしのぎを削った。

男子66㎏級準決勝で敗れたものの、今後の成長が楽しみな17歳の瀬戸勇次郎

瀬戸は先天性の色覚異常などの病気で、矯正をして右目は0.1、左目は0.09の視力があるという。4歳から柔道を始め、長年、一般の柔道に取り組んできた。今年7月の金鷲旗高校柔道大会に副将として出場したのを最後に、高校の柔道部を引退。その後は、一年の時から知っていたという視覚障害者柔道にも挑戦することにし、今大会に合わせて調整をしてきた。腕立て伏せやダンベルを使った筋トレに励み、夏場から体重を3㎏増やして66㎏に仕上げてきたという。

決勝トーナメントに進出したことは「自信になった」と話すが、上位の壁は厚かったようで、「格の違いを見せつけられた。藤本さんとの準決勝は、相手の低い体勢に対応できず、何もしかけられずに終わってしまった」と肩を落とす。また、「(組んだ状態から始まる視覚障害者柔道ならではの)組手争いに時間が取れないので、本当に力がないと主導権を握れないと痛感した。もっと努力したい」とも話し、今後は東京パラリンピックを視野に、さらなる強化を誓っていた。

(取材・文/荒木美晴、撮影/佐山篤)