パラバドミントン — 2022/11/7 月曜日 at 0:58:09

【世界バド2022】里見が単複二冠達成! 梶原も初優勝!

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世界選手権シングルスでは2連覇達成を果たした里見=国立代々木競技場第一体育館(撮影/植原義晴)

「ヒューリック・ダイハツ BWF パラバドミントン世界選手権2022」は6日、大会最終日を迎え、各クラスの決勝が行われた。女子シングルスはWH1の里見紗李奈(NTT都市開発)がシンシア・マセズ(スイス)を21-9、21-10のストレートで下し、優勝を果たした。里見はWH2の山崎悠麻(NTT都市開発)と組む女子ダブルスでもトルコとベルギー選手のペアを退け、単複優勝を成し遂げた。また、男子シングルスはWH2の梶原大暉(日体大)がキム・ジョンジュン(韓国)を21-12、21-11で退け、初タイトルを手にした。

里見は全9試合で貫録のストレート勝ち

東京パラリンピックに続き、里見が二冠の快挙を達成した。2種目あわせて計9試合を戦い、そのすべてがストレート勝ち。圧巻のプレーに観客席からも感嘆の声があがっていた。期間中は「楽しんで自分らしくプレーしたい」と語っていた里見。しかし、すべての試合が終わったあと、勝たなければいけないという金メダリストゆえのプレッシャーと戦っていたことを明かし、「ほっとしている」と絞り出した。パリパラリンピックに向けては「誰かに勝とうというよりも、全体的に底上げをしていきたい」と話し、前を見つめた。

女子ダブルス決勝は、序盤は互いに点を取り合う展開となったが、11点を先取したあとは里見・山崎組が連続得点。第2ゲームも主導権を握り、勝ち切った。山崎はシングルスの準決勝の前日に右肩から首にかけて負傷していたことを明かし、「そのなかで勝ち切れたのは良かった」と、安堵の表情を見せていた。

梶原はチャレンジャーから真の王者へ

梶原は世界選手権4連覇中のキムを下して初優勝

男子シングルスWH2は、東京パラリンピック金メダリストの梶原が世界選手権4連覇中のキムを破って、初優勝を飾った。前日の夜から緊張していたという梶原は、コートに入ると観客の応援を力に自分のプレーに集中。そして、鋭いチェアワークと正確なショットを繰り出し、ミスの少ないキムからアウトの球を誘うなど、試合をコントロール。勝利の瞬間は左手で力強くガッツポーズを作ってみせた。

試合後の「うれしい」「ほっとした」という言葉には、実感がこもっていた。世界選手権のタイトルを手にしていない自分は“チャレンジャー”であるとしながらも、東京パラリンピック以降は追われる立場となり、「いつ負けるか不安な日々が続いていた。この一年、つらかった」と打ち明ける。そのなかで最後まで勝ち切った経験は自信となり、次のステージへ進む原動力になる。「(パリに向けて)周りの目やプレッシャーを考えず、強くなることだけ考えて、強化していきたい」と梶原。日本の若きエースのこれからの挑戦を見守っていきたい。

女子SU5豊田、SL4藤野は準優勝

女子シングルスSU5の豊田まみ子(ヨネックス)は、今季世界ランキング1位のマニシャ・ラマダス(インド)に15-21、15-21で敗れ、準優勝だった。相手に速いタッチで返球され、自分から攻撃をしかけられず、ショットが甘く入ってしまったところを突かれた。ただ、収穫もあった。今大会は緊張感を持ちながらも安定したメンタルで試合に臨めたという豊田。世界選手権では自身4個目のメダル獲得となり、「これからも経験を活かして、頭を使ったプレーをしていければ」と話し、前を向いた。

同SL4の決勝に臨んだ藤野遼(GA technologies)は、ヘレー・ソフィー・ソゴイ(ノルウェー)と対戦し、9-21、21-19、10-21で敗れた。フットワークが藤野の強みだが、プレッシャーから序盤は本領を発揮できず。その後は粘りを見せるが、高身長の相手にパワーで押し切られた。パリに向けては「24時間バドミントンのことを考えるくらい意識を変えていかないと」と藤野。この悔しさを力に変え、さらなる強化に取り組んでいく。

金3、銀2、銅5の計10個のメダルを獲得

初出場ながら銅メダルを獲得した男子WH1の西村(右)

世界選手権は世界ツアーの12大会のうち、もっともグレードが高い最高峰の大会だ。今大会はパリパラリンピックの出場権に直接かかわるものではないが、来年2月から始まる選考レースでシード権を得るための重要な大会という位置づけだった。

東京パラリンピックで正式競技に採用されることが決まってから、各国が強化に力を注ぎ、競技レベルが進化しているパラバドミントン界。今大会も成長性を秘めたペルーやウクライナなどの選手が活躍した。日本からは15人が13種目に出場し、金3、銀2、銅5の計10個のメダルを獲得(前回大会は金1、銀1、銅9の計11個)した。来年のレースには、今大会不参加だった強豪の中国や海外の一部トップ選手もエントリーすることが予想される。そのなかで、日本はさらなる存在感を示すことができるか、注目が集まる。

(取材・文/荒木美晴、撮影/植原義晴)