「ヒューリック・ダイハツ BWF パラバドミントン世界選手権2022」は5日、各クラスの準決勝が行われ、女子SU5シングルスは豊田まみ子(ヨネックス)が亀山楓(高速)との日本人対決をストレートで制し、決勝進出を決めた。
強化合宿でともに練習し、互いに手の内を知る豊田と亀山。スコアは21-15、21-14とストレート勝利だったが、豊田は「足が動かず、手が先に出てしまった。ミスが多かったし、内容は一番ダメだった」と反省を口にする。一方、敗れた亀山は「一球ずつ大切に食らいついていこうとしたが、自分でミスをしてしまった」と、涙をこらえた。
豊田は世界選手権は5度目の出場。大学3年の時に初出場した2013年大会で優勝を飾り、15年大会は準優勝、17年大会は3位、怪我から復帰して臨んだ19年大会はベスト8の成績をおさめている。3大会ぶりの決勝の舞台、そして4大会ぶりの優勝に向けて、「全部出し切りたい」と話し、前を向いた。
東京パラリンピック5位の女子SL4の藤野遼(GA technologies)はKhalimatsu Sadiyah(インドネシア)と対戦し、21-15、12-21、21-13で勝利した。前日の準々決勝に続き、フルゲームの激闘となったが、体力強化の成果を実感していると話す藤野は「今日も3ゲームを覚悟して臨めた」と振り返る。強みのフットワークを活かしてコートを縦横無尽に動き、徐々に相手を追い込んだ。
世界選手権では自身初の決勝進出を決めた藤野。頂点に王手をかけ、「東京で悔しい想いをしたので、(同じ会場の)ここで晴らしたい」と言葉に力を込めた。
WH1里見は単複2冠へあとひとつ
女子WH1の里見紗李奈(NTT都市開発)は韓国人選手に勝ち、決勝進出。WH2の山崎悠麻(同)はペルー人選手にストレートで敗れた。シングルスのあと、里見と山崎は女子ダブルスに挑み、韓国ペアに21-14、21-16で勝利した。試合後、取材に応じたふたりは、「WH2の選手に触らせないように配球して2対1の有利な形を作りたい。金メダルを獲りたい」と話した。また、それぞれシングルスを振り返り、山崎は「(19年の日本国際以来の対戦で)相手の情報がないなか、ミスをしてしまった。相手の気迫に押され、気持ちで負けてしまった」、里見は「世界選手権では単複優勝はしていないので、頑張りたい」と語った。
男子はWH2梶原が勝利、決勝で4連覇中の金と対戦
男子WH2シングルスは梶原大暉(日体大)がRick Cornell Hellmann(ドイツ)に21-17、21-7で勝利した。第1ゲームは4連続失点からスタートし、一度は逆転したが、その後もリードを許してしまう。再び追いついて、このゲームを取ることができたが、本来の動きを取り戻したのは第2ゲームからで、「入りが悪い。緊張してしまった。乗り切れてなかった」と、反省の言葉が口をついた。
それでもしっかりと勝ち切り、決勝に駒を進めたのはさすが。決勝では、東京パラリンピックで優勝を争ったKim Jung Jun(韓国)と対戦する。東京パラでは勝利した梶原だが、相手は世界選手権4連覇中の王者で、準決勝で東京パラ3位でライバルのChan Ho Yuen(香港)を破って勝ち上がっており、勢いを増している。梶原は「世界選手権のタイトルはまだ獲っていないし、僕はチャレンジャー。自分のやるべきことをやり、楽しんでいきたい」と、気を引き締めていた。
また、ここまで大躍進を遂げている男子WH1の西村啓汰は、Jeong Jaegun(韓国)にストレートで敗れた。大会を振り返り、「自分が持っているものが通じたところもあるけれど、プラスアルファの強みを身につけないといけないとわかった。苦い思い出になった」と西村。それでも初出場で3位という結果は立派。今後のさらなる活躍に期待したい。
男子SL3の藤原大輔(ダイハツ工業)は東京パラリンピック金メダリストのPramod Bhagat(インド)に20-22、14-21で敗れた。第1ゲームは後半に追いつき、先にゲームポイントを握ったが、そこから逆転を許してゲームを失った。第2ゲームも粘りを見せたが、届かなかった。
Bhagatに対してこれで5連敗となったが、東京パラの時よりも実力差が縮まったという手ごたえもある。半面コートのため、これまではラリーをつないで耐える展開が多かったが、攻撃にシフトしつつある世界のトレンドを踏まえ、自ら主導権を掴みにいくプレーに挑戦した。その結果、スマッシュがアウトになるシーンもあったが、「追い込まれた場面でスマッシュが打てたのは成長だと思う」と藤原。今後は、後半に疲労が溜まってからなお精度の高いショットが打てるようになることが勝利のカギになるといい、さらなる成長を誓っていた。
男子SU5の今井大湧(ダイハツ工業)は、Dheva Anrimusthi(インドネシア)に13-21、12-21で敗れた。「上を目指していたので悔しいけれど、結果を受け止める。この悔しさを糧にパワーアップして、パリに向けて課題を見つけてやっていきたい」と話した。
(取材・文/荒木美晴、撮影/Atsushi SAYAMA / BestSmile Japan)