9月20日に開幕する「ラグビーワールドカップ2019日本大会」。その予選が終わり、決勝トーナメントに出場する国が出揃う頃、10月16日から20日まで“もうひとつのラグビー世界大会”「車いすラグビーワールドチャレンジ2019」が開催される。世界の強豪8ヵ国が集結する大会を約1ヵ月後に控えた9月12日、「車いすラグビーワールドチャレンジ2019日本代表壮行イベント」が東京ミッドタウン日比谷で行われた。
車いすの車輪をモチーフに、チャレンジの“C”をかたどったトロフィーや公式球が披露されたイベントには、車いすラグビー日本代表の池透暢選手、池崎大輔選手、乗松聖矢選手、今井智明選手が参加。“ダブルワールドラグビー”として盛り上げるため、2011年、2015年と2回のワールドカップに出場した元ラグビー日本代表で、現在日本ラグビーフットボール選手会代表理事の畠山健介選手もゲストとして登場した。
一般のラグビーと車いすラグビーは、ボールの形状やルールなど異なることは多いが、渾身のタックルやチームで力を合わせて、ひとつのトライを生み出すところは同じ。そして、どちらの日本代表もチームワークが強みだ。
ドキュメンタリー映画『マーダーボール』で車いすラグビーの存在を知り、その迫力に驚いたという畠山選手。前回のワールドカップで強豪・南アフリカを劇的に破るなど、日本の快進撃をスクラム最前列で支えた選手をしても、車いすラグビーのタックルはすさまじく映るようだ。「実際に体験したら、思っていたより10倍も強い衝撃でした」(畠山選手)
「車いすラグビーワールドチャレンジ2019」は、ワールドカップと同時期に開催される国際大会だけに、世界からも注目が集まる。大きな声援は選手の背中を後押しするが、一方で仲間の声までかき消してしまうため、コミュニケーションがとりづらくなることが懸念される。「東京パラリンピックまでにその状況を経験できるのは、大きなアドバンテージになる」と前向きにとらえる乗松選手。池崎選手はこの大会を「いろんな意味で試されて、すべての意味で次につながる試合」だと位置づける。
9月6日から9日まで韓国で行われた「2019 IWRF 車いすラグビー アジアオセアニア選手権大会」では、予選で4回ものオーバータイム(延長戦)の末、勝利したオーストラリアに、決勝で2点という僅差(55-57)で敗れ、準優勝に終わった日本代表。だが、キャプテンの池選手が「これから成長するための“気づき”が得られた大会だった」と振り返るように、負けを経験したことで、より強いチームへと成長するためのヒントをつかんだようだ。
「リードしている場面で、さらにギアを上げて自分たちで仕掛ける必要がある」(今井選手)
「もっと高いレベルでチームが結束しないと先にいけない」(乗松選手)
東京パラリンピックまで、国際試合は残すところあと2回。明確になった課題をチーム一丸となって、ひと月でどこまで修正できるか。「車いすラグビーワールドチャレンジ2019」は、東京パラリンピックで日本が金メダルをとるための、大事な試金石となる。
(取材・文/山本千尋、撮影/植原義晴)