6月10〜11日の2日間にわたって、駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場で「IPC公認 第28回日本パラ陸上競技選手権大会」が開かれた。東京での開催は初。昨年のリオパラリンピックに出場したトップ選手から10代の若手選手まで、約250名がエントリーした。
国際大会から帰国したばかりの選手も多く、タイムがいまひとつ伸びない中、視覚障がい(T13/弱視)の佐々木真菜(東邦銀行)が、女子400mで1分0秒19のアジア新記録を樹立し、会場を盛り上げた。
女子T42の走幅跳は前川楓(チームKAITEKI)が3m76で優勝した。スタート時と踏み切り時の風向きが変わるなど、風に苦労するなか、安定したジャンプを見せた。今春から元オリンピック走幅跳日本代表の井村久美子さん(旧姓・池田)の指導を受ける。もともと100mに力を入れていたが、リオでは走幅跳で4位になり、悔しさと同時に「メダルをより狙いやすい」と考え、メイン種目に。目標を4mに据え、「7月の世界選手権(イギリス)では幅でメダルを絶対に獲る」と意気込む。
注目の車いす男子T54は、これまで約30年間にわたって短距離界をリードしてきた永尾嘉章さんが現役引退。前日の記者会見では「永尾さんに勝って終わりたかった」と話した西勇輝(野村不動産パートナーズ)が200mで優勝。100mは生馬知季(WORLD-AC)、800mは鈴木朋樹(トヨタ自動車)がそれぞれ制した。今年の東京マラソン優勝の渡辺勝(凸版印刷)は1500mと400mの2種目で頂点に立った。渡辺は実力者がそろう1500mを振り返り、「今日は先頭に立ってレースを作りたかった。これからも勝ちにこだわりたい」と話した。
男子三段跳びではT47の芦田創(トヨタ自動車)が13m53をマークした。「14mを絶対出せるという感覚だったのでふがいない結果」と唇をかむ。その一方で、初日に出場した走幅跳でも「今年は昨年のベストがアベレージで出せるようになってきた」と手ごたえも感じる。
リオでは男子リレーで銅メダルを獲得したが、走幅跳では思うような記録が出せなかった。帰国後の冬の間は、練習で厳しく追い込んだ。(出身の)早稲田大での練習では、質の高いトレーニングに取り組むオリンピアンにも刺激を受ける。「パラリピアンはまだまだ甘い。アスリートと呼ぶなら、そこに障がいは関係ない。世界でメダルを獲りきる、という覚悟を持って臨んでいきたいと思っています」と力強く語り、前を向く。
リオのメダリスト・佐藤は4種目で優勝
リオパラリンピックで2つの銀メダルを獲得した車いす男子T52の佐藤友祈(WORLD-AC)は、100m、400m、800m、1500mとエントリーしたすべての種目で優勝し、存在感を見せた。リオ後の冬の間は走り込みを重視し、スパートの練習を重ねた。成果は100mのスタートダッシュにあらわれ、またその感触の良さが400mや1500mの結果にもつながった。世界選手権にピークあわせていくとし、「リオで負けた選手を全員抑え、優勝したい」と意気込みを語った。
男子T44の走幅跳と走高跳には、冬季パラ競技のスノーボードW杯最終戦で2種目で表彰台に立った成田緑夢(近畿医療専門学校)がエントリーした。「走幅跳と走高跳も走りのエネルギーをいかに距離や高さに伝えるかなので、陸上とスノボの練習の相乗効果はあると思います」と成田。陸上トレーニングをうまく取り入れながら、ピョンチャンパラリンピックに向けて身体を作っていくつもりだ。
また、リオで銅メダルを獲得した男子4×100mリレー(T42-47/切断など)は、芦田、佐藤圭太(トヨタ自動車)、多川知希(AC・KITA)、池田樹生(中京大)の4人で出場し、44秒91。また、5月のスイスの大会で13年ぶりに日本記録(3分11秒36)を塗り替えた男子車いす4×400mリレー(T53-54)は、渡辺、鈴木、西、松永仁志(WORLD-AC)の4人で出場。その日本記録にはわずかに及ばなかったものの、3分12秒57の好タイムでフィニッシュした。
アンカーを務めた松永は、T53の400mで優勝しており、「マイルリレーをメインにしていきたい。そのためには400mの走力が必要。東京パラで実施されるかわからないけれど、良いナショナルチームを作りたい」と話した。
(取材・文/荒木美晴、撮影/佐山篤)