パラパワーリフティング — 2021/1/31 日曜日 at 23:44:08

【全日本/DAY2】宇城が階級変更した男子72㎏級で日本新!

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日本新記録で男子72㎏級を制した宇城元=千代田区立スポーツセンター(撮影:佐山篤)

「第21回全日本パラ・パワーリフティング国際招待選手権大会」は31日、東京・千代田区立スポーツセンターで2日目が行われ、男子80㎏級日本記録保持者の宇城元(順天堂大職員)が同72㎏級に出場し、新記録となる176㎏に成功して優勝を果たした。

左ひじを2016年と2018年に手術し、昨年2月のW杯マンチェスター大会の前には左肩を痛めるなど、ここ数年はケガに苦しんだ宇城。階級変更は、感覚の違いや痛みがあるなかで徐々に「支えられる重量が減っている」ことに加え、コロナ禍でトレーニングができない時期を経験し、改めて競技に向き合った結果、決断したという。体重は5カ月間で8キロ減らし、当日の検量では71.7キロ。体重が減れば筋量も減るが、「しっかり食べて、コンディショニングの知識をつけて」身体を作り上げた。試技では166㎏、171㎏を確実に成功させ、3本目の176㎏も挙げきり、さすがの調整力の高さを見せた。

宇城に日本記録を更新された樋口健太郎(フリー)は170㎏で2位となったが、「今日の試技はプラン通り。日本記録にはこだわっておらず、パラリンピック出場だけを考えている。W杯ドバイ大会で190㎏を挙げるつもりでやっていて、今回はその過程にあるもの」とマイペースを崩さない。日本を代表するリフター同士の今後の展開に注目したい。

男子97㎏級は4人が出場。160㎏の日本記録を持つ馬島誠(日本オラクル)は、第1試技で154㎏を軽く挙げ、第2試技で158㎏、第3試技で自己新となる161㎏に挑み、3本ともオール白旗判定の出来を見せた。昨年の全日本、チャレンジカップ京都ではいずれも157㎏からスタートして失敗し、リズムを崩す試技が続いていた。その悔しい経験から、今大会は「冒険せず、次の大会につなげるためのプラン」で臨んだという。「MQSの165㎏を意識しすぎて伸び悩む時期が2年ほどあったけれど、今回は試合を楽しむことができた。ここから改めて次につなげていきたい」と話し、前を向いた。

なお、順位は3位ながら、佐藤和人(兵庫県警察)が特別試技で165㎏を成功させ、日本記録を塗り替えた(特別試技は記録として残るが、順位には反映されない)。佐藤はコロナ禍で練習ができない間、いちからトレーニングを見直したといい、その成果が出た形だ。「絶対に165㎏を取るぞという気持ちで挑戦したので、うれしかった。世界的にみるとまだ記録は低いので、いずれ200㎏、その先のメダルが取れるラインまで強化していきたい」と話した。

不調ながら、美しい試技を披露した男子88㎏級の大堂秀樹(写真提供:日本パラ・パワーリフティング連盟/撮影:西岡浩記)

男子88㎏級は大堂秀樹(SMBC日興証券)が、174㎏を挙げて優勝した。昨年2月に左の大胸筋を傷め、その影響もあり夏ごろには左肩の痛みが増すなど、本調子ではなかったことを明かす。第3試技の180㎏は胸の止めが甘く失敗に終わったが、それでも2本目まではベテランらしいブレのない美しい試技で魅せた。4度目のパラリンピック出場を目指す大堂は、「不調の底を打ったと思うので、ここから上がっていきたい」と再浮上を誓っていた。

男子65㎏級は、奥山一輝(サイデン化学)が第1試技で147㎏をマークし、制した。第2、第3試技、そして特別試技と連続で日本記録更新を狙って152㎏に挑戦したが、いずれも失敗。「情けない限り。細かい静止が甘く、最後まで立ち直れなった。二度とこのようなミスをしない。東京パラまでまだ時間があるのであきらめず頑張る」と話した。男子107㎏級は日本記録保持者の中辻克仁(日鉄環境プラントソリューションズ)のみがエントリーし、185㎏、195㎏に成功。第3試技で自己ベストの203㎏に挑戦して挙げきったが、わずかにブレが生じて成功判定にはならなかった。

(取材・文/荒木美晴、撮影/佐山 篤)